こんにちは!行政書士の栗原です。
仕事帰りにふらっと立ち寄る、行きつけのスタンド。 琥珀色の液体がグラスに満たされ、きめ細かな泡が蓋をする。カウンター越しにその一杯が手渡される瞬間、一日の疲れがスッと消えていく…。
そんな「最高の瞬間」を提供したくて、自分のお店を持とうと決意された方も多いのではないでしょうか。私が店長をしていた「遊べる本屋」でも、お客様が商品を手にとって笑顔になる、その距離感と空気感をとても大切にしていました。
しかし、これから開業準備を進める皆さん。 この「お客様との心地よい距離感」が、保健所の飲食店営業許可においては、最大の「壁」になることがあるのをご存知でしょうか?
「えっ、サーバーの向きを90度変えないと許可出せませんよ?」 「この手洗い場だと、ビールに水が跳ねますよね?」
「そんな細かいところまで?」と思われるかもしれませんが、これらは保健所の検査で実際によく指摘されるポイントなのです。
特に狭小物件では、数センチの配置ミスが命取りになり、最悪の場合、配管工事からやり直し(数十万円のロス!)なんてことも…。
今回は、教科書的なルールだけでなく、現場の検査員がチェックする「泥臭いけれど超重要なポイント」を深掘りして解説します。

検査員はココを見る!サーバー設置の「3つの鬼門」
保健所が一番気にしているのは、一言で言えば「不衛生な状態を防ぐこと」です。 もっと単純に言うと、「ばい菌や汚れが、口にするもの(ビールやグラス)に付かないようにする」ということです。
「サーバー=調理器具」という視点で見ると、以下の3点が厳しくチェックされます。
1. 「魔の30cm」!手洗い場との距離問題
厨房内には「スタッフ専用の手洗い場(L-5サイズ以上)」が必須ですが、これとビールサーバーが近すぎるとNGが出ます。
- 検査員の視点:「手を洗った時の水しぶきや石鹸の泡が、サーバーの注ぎ口やグラスに飛び散りませんか?」
- 基準の目安:自治体によりますが、手洗い場とサーバー(または食品)の間は30cm〜50cm程度離すか、間に「アクリル板などの遮蔽板(高さ30cm以上)」を設置して、水しぶきをガードする必要があります。
狭い厨房ではこの距離が確保できないことが多いです。その場合は、最初からホームセンターでアクリル板を買ってきて、シンクの横に設置しておくのが賢明です。
2. 「客席へのはみ出し」問題
カウンターにサーバーを置く際、注ぎ口が客席側にせり出していませんか?
- 検査員の視点:「お客さんのくしゃみや唾が、注ぎ口にかかる位置にありますよね?」
- 対策:注ぎ口はあくまで厨房のライン(カウンターの内側)に収めること。もしデザイン上どうしても客席側に見せたい場合は、客席との間に「ガラスの衝立(ついたて)」を立てて、飛沫(ひまつ)がかからない構造にする必要があります。
3. 「排水チューブ」の行方
意外と見落とすのが、サーバーの受け皿から出る排水チューブです。
- 検査員の視点:「こぼれたビール、どこに流してますか? まさか客席の足元のバケツじゃないですよね?」
- 対策:排水は厨房内の排水口(シンクや床排水)に直結させるのが基本です。チューブが客席側をまたいでいたり、不衛生なバケツに溜まっていたりすると、不衛生だと判断されます。内装工事の段階で、カウンターに穴を開けて厨房側にホースを通すルートを確保しておく必要があります。
「厨房」と「客席」を分ける「結界(エリア分け)」の正解
立ち飲み屋のようなオープンキッチンでは、どこまでが厨房で、どこからが客席かの線引き(区画)が非常にシビアです。 検査員を納得させるための「結界」の作り方を伝授します。
床材を変えるだけでは弱い?
「厨房は防水床(コンクリートなど)、客席は木目調」 このように床の材質を変えるのは基本ですが、それだけでは「物理的な遮断」として不十分とされることがあります。
最強のアイテム「スイングドア」と「跳ね上げカウンター」
確実なのは、「入ろうと思わなければ入れない構造」を作ることです。
- ウェスタン扉(スイングドア): 腰高(床から70〜80cm程度)の扉を一枚つけるだけで、劇的に印象が変わります。「ここから先はスタッフ以外立ち入り禁止」という明確な意思表示になります。
- 跳ね上げ式カウンター: カウンターの一部をパタンと持ち上げて出入りする構造。これなら、下ろしている時は完全に壁となるため、文句なしの区画となります。
費用を抑えたいなら、簡易的なスイングドア(DIYでも可)がおすすめです。これがあるだけで、検査員への心証は「しっかり衛生管理しようとしている店だな」とポジティブになります。

意外な盲点!「冷蔵ショーケース」の扉の向き
客席から見える位置に「冷蔵ショーケース」を置いて、冷えた日本酒やワインを見せたい場合も注意が必要です。
引き戸(スライド)ならOK、開き戸(スイング)は要注意
- 引き戸(スライド式): 横にスライドするタイプ。扉を開けてもスペースを取らないため、狭い通路やカウンター内でも比較的設置しやすいです。
- 開き戸(手前に引くタイプ): 扉を開けた時に、厨房から客席側にはみ出す場合、あるいは通路を完全に塞いでしまう場合はNGになることがあります。「作業中に扉を開けたら、お客さんにぶつかるよね?」「逃げる時の邪魔になるよね?」という理屈です。
狭小物件では、数センチ単位で図面を調整し、機器の扉が開くスペースまで計算に入れる必要があります。
▶ご参考:横浜市- 飲食店営業許可について
まとめ:行政書士直伝!「一発合格」のためのセルフチェックリスト
最後に、これから準備を進めるあなたが、図面確定前に確認すべきリストをまとめました。
- サーバーと手洗い場の距離:30cm以上離れているか? 近いなら水はね防止の板はあるか?
- サーバーの向き:注ぎ口が客席側に完全にはみ出していないか?
- 排水ルート:受け皿の排水は、ちゃんと厨房内のシンク・床に落ちるようになっているか?
- 区画(エリア分け):厨房と客席の境目に、スイングドア等の仕切りはあるか?
- 冷蔵庫の扉:開けた時に客席や通路の邪魔にならないか?
私が店長だった頃、バックヤードの整理整頓が店舗運営の肝だと痛感しました。飲食店の厨房も同じです。見えない部分(排水や動線)がしっかり設計されている店は、必ずオペレーションがスムーズで、長く続く良い店になります。
「この図面で本当に大丈夫かな…」と不安になったら、工事の着手金(費用)を払う前に、ぜひ私たち専門家にご相談ください。図面一枚から、リスクを洗い出します。

お店のレイアウトや物件の条件によって、保健所の判断は細かく異なります。「横浜市〇〇区の場合はどう?」「この狭さでも許可取れる?」など、具体的な手続きや条件でお悩みの方は、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長の行政書士が、あなたのこだわりを守りつつ、最短で許可を取るための作戦を一緒に考えます。







