こんにちは。元「遊べる本屋」店長の行政書士、栗原です。
いやぁ、身に沁みますよね、星1つの低評価レビュー。私も「遊べる本屋」で店長をしていた頃、オープンしたばかりのSNSアカウントに手厳しいご意見を頂戴しては、店のバックヤードで膝から崩れ落ちた夜が何度もありました。「お客様は神様です」なんて言いますが、神様、ちょっと厳しすぎやしませんか…?と、天を仰いだことも一度や二度ではありません。
特に、これから新しい事業の始め方を模索し、ようやく開業にこぎつけた方にとって、手塩にかけたサービスへの低評価は、心が折れそうになるほど辛いものですよね。
でも、ちょっと待ってください。その星1つ、本当にただの「ピンチ」でしょうか?
実は、その低評価レビューこそが、あなたの事業を劇的に成長させ、熱狂的なファンを生み出す「チャンスの原石」だとしたら…?
今日は、元本屋店長であり、今は事業の法律の専門家である行政書士の私が、低評価レビューというピンチを、信頼回復とファン獲得のチャンスに変える「神対応」の極意と、その先にある盤石な事業運営のための再発防止策まで、徹底的に解説します!

なぜ低評価レビューは「チャンス」なのか?
そもそも、なぜ低評価がチャンスになるのか。それは、低評価レビューが以下の3つの貴重な価値を持っているからです。
リアルな顧客の声(改善のヒント):お客様が時間と労力を使って書いてくれた、いわば「無料の経営コンサルティング」です。自分たちでは気づけなかったサービスの穴や、顧客が本当に求めていることを教えてくれます。
誠実さを見せる舞台:レビューは、投稿者だけでなく、未来の多くのお客様も見ています。そのレビューに対して、いかに真摯に、誠実に対応するか。そのやり取り自体が、最高の集客ツールになり得ます。
炎上リスクの回避:見て見ぬふりをすることが、一番の悪手。初期対応を誤ると、SNSなどで一気に拡散し、取り返しのつかない事態にもなりかねません。迅速で適切な対応は、事業を守るための防火壁なのです。
【ステップ1】鉄は熱いうちに打て!神対応の初期動作
クレーム対応はスピードが命。お客様の不満がマグマのように溜まって大噴火する前に、素早く、そして冷静に対応しましょう。
① 光の速さで「共感」と「謝罪」を
まずやるべきことは、言い訳でも、事実確認でもありません。「不快な思いをさせてしまったこと」に対して、真摯に謝罪することです。
悪い例:
「確認しましたが、そのような事実はありませんでした。」
「他のお客様からはご満足いただいておりますが…」
良い例:
「この度は、〇〇の件でご不快な思いをさせてしまい、誠に申し訳ございませんでした。」
「せっかく楽しみにご利用いただいたにも関わらず、ご期待に沿えず大変心苦しく思っております。」
ポイントは、相手の「感情」に寄り添うこと。たとえ事実関係が不明でも、お客様が不満を感じたという事実は事実なのです。まずはその気持ちを受け止め、共感の姿勢を示しましょう。
② 公開の場で冷静に事実確認
次に、何が問題だったのかを具体的に把握します。ただし、公開されているレビューの返信欄で、お客様と泥沼の論争を繰り広げるのは絶対にNG。
「よろしければ、当時の状況を詳しくお伺いしたく存じます。お手数ですが、DM(ダイレクトメッセージ)か、弊社のお問い合わせフォームよりご連絡いただけますでしょうか。」
このように、クローズドな場所に誘導し、他のお客様が見ている前では「誠実に対応しようとしている姿勢」を見せることが重要です。
【ステップ2】信頼回復の決め手!具体的な解決策と再発防止の約束
クローズドな場で詳細をヒアリングできたら、いよいよ問題解決のフェーズです。
① 原因の究明と真摯な説明
なぜそのような事態が起きたのか。社内調査の結果を、誠意をもってお客様に説明します。ここで嘘やごまかしは禁物。たとえ自社に非があったとしても、正直に認め、説明責任を果たすことが信頼回復の第一歩です。
② 妥当な解決策の提示と毅然とした態度
状況に応じて、具体的な解決策を提示します。返金、交換、次回の割引クーポンなど、様々な方法が考えられますが、重要なのは「相手の不利益を回復するために、真摯な提案をする」ことです。
ただし、社会通念を著しく逸脱するような過剰な要求にまで応じる義務はありません。その線引きは難しいですが、誠心誠意の謝罪と、妥当な範囲での補償を提示することが基本です。それでも納得いただけず、執拗に金銭や土下座を要求されるなど、正当なクレームの範囲を超えていると感じた場合は、き然とした態度で「それ以上の対応は致しかねます」と伝える勇気も必要です。事業者と消費者の間のトラブルについては、全国の消費生活センターでも相談を受け付けています。一人で抱え込まず、専門家の意見を聞くことも検討しましょう。
▶ ご参考:独立行政法人国民生活センター | 全国の消費生活センター等
https://www.kokusen.go.jp/map/
③ 「再発防止策」を具体的に約束する
そして、最も重要なのが「再発防止策」の提示です。「気をつけます」「改善します」といった精神論ではなく、「誰が、いつまでに、何を、どのように改善するのか」を具体的に伝えましょう。これが、お客様の「もう一度信じてみよう」という気持ちを引き出します。
【ステップ3】二度と起こさない!盤石な事業運営のための再発防止策
さて、ここからが行政書士である私の本領発揮です。クレーム対応は、その場しのぎで終わらせてはいけません。その原因を根本から断ち、事業全体の仕組みを改善する「投資」と捉えるべきです。
特に、民泊のような新しい分野のビジネスでは、運営ルールが確立されていなかったり、副業感覚で始めた結果、管理体制が疎かになったりして、トラブルに発展するケースが散見されます。
具体例:民泊運営で「清掃が不十分」という星1レビューがついたら?
近年、インバウンド需要の回復で再び注目される民泊ビジネス。しかし、その手軽さの一方で、運営の難しさから低評価レビューに繋がることも少なくありません。例えば、「部屋に入ったら髪の毛が落ちていた」「前の宿泊者のゴミが残っていた」といった清掃不備のクレームは典型例です。
このような事態を防ぎ、盤石な運営体制を築くには、開業前の「申請」段階から、以下の点を徹底することが極めて重要です。
① あなたの事業はどの法律が根拠?民泊新法と旅館業法の違いを知る
「民泊」と一言でいっても、その始め方は主に2種類あり、根拠となる法律が異なります。それが「住宅宿泊事業法(民泊新法)」と「旅館業法」です。どちらを選択するかで、運営方法や事業のスケールが大きく変わってきます。
- 住宅宿泊事業法(民泊新法):年間営業日数が180日以内に制限されますが、「届出」で始められるため、副業として空き家を活用したい、といった場合に適しています。
- 旅館業法(簡易宿所営業):都道府県知事等(※)の「許可」が必要となり、消防設備の設置など要件は厳しくなりますが、営業日数の制限はありません。本格的な宿泊事業として、投資に見合う収益を上げたい場合はこちらが選択肢となります。
どちらの法律で運営するにせよ、宿泊者の衛生や安全の確保は事業者の義務です。低評価レビューは、この基本が疎かになっているサインかもしれません。まずはご自身の事業の根拠法を再確認し、定められたルールを遵守できているか見直しましょう。
以下の表で、両者の主な違いを比較してみてください。
比較項目 | 住宅宿泊事業法(民泊新法) | 旅館業法(簡易宿所) |
---|---|---|
手続き | 都道府県知事等への届出 | 都道府県知事等(※)の許可 |
営業日数 | 年間180日以内 | 制限なし |
主な要件 | 居住用家屋であること | 玄関帳場、面積基準など、より厳しい |
位置づけ | 副業・空き家活用向け | 本格的な宿泊事業向け |
※ 保健所を設置する市や特別区では、市長や区長が許可権者となります。
▶ ご参考:観光庁 | 民泊制度ポータルサイト「minpaku」
https://www.mlit.go.jp/kankocho/minpaku/
▶ ご参考:厚生労働省 | 旅館業法
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000130600.html
② 「運営マニュアル」という名の憲法を作る
「清掃はしっかりやる」という曖昧なルールでは、担当者によってクオリティに差が出てしまいます。
- 清掃チェックリストの作成(ベッドの下、排水溝、窓のサッシなど、具体的な項目を50個以上挙げる)
- リネン交換の手順
- 緊急時(水漏れ、設備故障など)の対応フロー
- クレーム受付・報告・対応の手順
このような具体的な「運営マニュアル」を作成し、スタッフ全員で共有することで、サービスの品質を一定に保ち、トラブルを未然に防ぐことができます。
③ 管理体制の明確化(外部委託という選択肢)
ご自身がオーナーとして民泊を運営する場合、特に副業であれば24時間体制での対応は難しいでしょう。清掃や鍵の受け渡し、緊急時対応などを住宅宿泊管理業者に委託することも、有効な再発防止策であり、賢い投資です。
また、旅館業許可で運営する場合も、複数の施設を運営する際には、信頼できるスタッフや外部パートナーとの連携によるしっかりとした管理体制が不可欠です。
クレーム対応フローの図解
いざという時に慌てないために、社内で以下のようなフローを共有しておきましょう。

まとめ:星1つのレビューは、あなたの事業の「北極星」である

低評価レビューへの対応は、面倒で、心が削られる仕事です。しかし、その一つ一つに真摯に向き合い、改善を重ねていくことでしか、事業は成長しません。
お客様からの厳しい声は、時に道に迷いそうになる事業主にとって、進むべき道を指し示してくれる「北極星」のような存在なのです。…なんて、ちょっとカッコつけすぎですかね?(笑)
でも、本心からそう思います。
事業の始め方は、情熱があれば誰にでもできます。しかし、その事業を継続し、成長させていくには、情熱だけでは乗り越えられない壁が必ず現れます。特に、許可や申請が関わるビジネスは、スタートラインに立つまでに専門的な知識が不可欠ですし、開業後も法律に則った誠実な運営が求められます。
クレーム対応から見えた課題を、どのように事業の仕組みに落とし込み、盤石な体制を築いていくか。そうした事業運営の根幹に関わる部分で、私たち行政書士がお手伝いできることは、実はたくさんあります。
新しい事業の立ち上げや、現在の事業運営に行き詰まりを感じている方。あるいは、インバウンド向けのビジネスや民泊投資にご興味がある方。
具体的な事業計画や、各種許認可申請に関するご相談など、いつでもお気軽にご連絡ください。元・本屋店長の経験と、行政書士の専門知識をフル活用して、あなたの「ピンチ」を「チャンス」に変えるお手伝いをさせていただきます。
あなたの挑戦を、心から応援しています!
こちらもご確認ください。→民泊事業申請について
【ご注意】 この記事は、2025年5月時点の情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。個別の事案に対する法的アドバイスではありません。民泊の開業・運営にあたっては、必ず最新の法令・条例をご確認の上、必要に応じて管轄の行政機関や専門家にご相談ください。