こんにちは!行政書士の栗原です。
「駅徒歩5分、路面店、家賃も予算内。おまけに内装もおしゃれ!」
そんな奇跡のような物件に出会ったら、誰だって心が踊りますよね。私が店長だった頃も、新しい店舗の候補地を見るたびに「ここにあの本棚を置いて、ここはあの雑貨のスペースにして…」と、妄想が止まらなくなったものです。
でも、ちょっと待ってください。ハンコを押すその前に、一つだけ絶対に確認しなければならないことがあります。
それは、「用途地域(ようとちいき)」です。
「なにそれ?不動産屋さんは何も言ってなかったけど…」
もしそうなら、要注意です。この用途地域によっては、飲食店営業許可はおろか、お店を開くこと自体が法律で禁止されている場合があるからです。契約してから「営業できません」と言われても、支払った費用は戻ってきません。
今回は、物件探しの最大の落とし穴、「用途地域」の罠について解説します。

そもそも「用途地域」とは?街には「色分け」がある
日本の街は、無秩序に建物が建たないよう、都市計画法という法律でエリアごとに「建てていいもの・ダメなもの」が細かく決められています。これを「用途地域」と呼びます。
大きく分けると「住居系」「商業系」「工業系」の3つがあり、さらに細かく13種類に分かれています。行政の地図(都市計画図)を見ると、地域ごとにカラフルに色分けされています。
飲食店を開業する上で、特に注意が必要なのは以下のポイントです。
【早見表】あなたのやりたいお店、そこでできる?
「細かい法律の話はいいから、結論が知りたい!」という方のために、主な業態ごとの営業可否を表にまとめました。
ご検討中の物件がどの地域にあるかを確認し、照らし合わせてみてください。
| 用途地域 (エリアの特徴) | 一般飲食店 (カフェ・定食屋・深夜0時まで営業の居酒屋 等) | 深夜酒類提供飲食店(深夜0時以降も営業するBAR・居酒屋 等) | 接待飲食店 (キャバクラ・スナック・ホストクラブ 等) |
| 第一種・二種 低層住居専用 (静かな住宅街) | △ (※1) | ✕ | ✕ |
| 第一種・二種 中高層住居専用 (マンション街など) | ◯ (※2) | ✕ | ✕ |
| 第一種・二種 住居・準住居 (幹線道路沿いなど) | ◯ | △ (※3) | ✕ |
| 近隣商業・商業地域 (駅前・繁華街) | ◯ | ◯ | ◯ (※4) |
| 準工業地域 (町工場と住宅の混在) | ◯ | ◯ | △ (※4) |
【注意点の解説】
- ※1:原則NGですが、「店舗兼用住宅(自宅の一部をお店にする)」などの条件を満たせば可能な場合があります。
- ※2:床面積に制限があります(第一種は500㎡以下、第二種は1500㎡以下など)。
- ※3:ここが最大の落とし穴!建物としては飲食店OKですが、風営法(条例)により深夜営業(0時以降)の届出ができないケースが多いです。(商業地域から数十メートル以内ならOK、などの例外規定あり)
- ※4:学校や病院からの距離制限(保全対象施設)をクリアする必要があります。
このように、「普通のレストランならOKだけど、深夜のバーはNG」という場所が、街にはたくさんあるのです。
深夜営業(バーなど)を目指すなら、さらにハードルが上がる!
表で「△」や「✕」がついている地域で、深夜0時以降にお酒を提供するバーや居酒屋を開業しようとしている方は、特に警戒が必要です。
なぜなら、飲食店営業許可(保健所)は取れても、深夜営業(警察署)はダメな地域があるからです。
住居系地域は「深夜営業」全滅の可能性大
風営法および各都道府県の条例により、「住居専用地域」や「住居地域」の多くは、深夜酒類提供飲食店営業が禁止されています。
特に横浜市や川崎市、東京都内などの首都圏では、駅前の繁華街(商業地域)を一歩出ると、すぐにこの「住居地域」に入ってしまうことがよくあります。「駅近だから大丈夫だろう」という思い込みは禁物です。

契約前に必ずやるべき「調査」の手続きと流れ
では、気に入った物件が営業できる場所かどうか、どうやって調べればいいのでしょうか。
1. 自分で調べる(一次スクリーニング)
各自治体は、ウェブサイトで都市計画図を公開しています。「〇〇市 都市計画図」「〇〇区 用途地域」などで検索し、住所を入力すれば、その場所の色(用途地域)がわかります。
- 赤・ピンク系:商業地域、近隣商業地域(基本OK!)
- 緑・黄緑系:住居専用地域(要注意!)
2. 不動産屋さんに確認する
「重要事項説明書」には必ず用途地域が記載されます。契約直前ではなく、内見の段階で「ここは飲食店できますか?深夜営業の制限はありますか?」としつこいくらい確認しましょう。ただし、不動産屋さんは「飲食店の許可」には詳しくても、「深夜営業の届出(警察)」の管轄については専門外の場合もあります。
3. 行政書士や役所に相談する(最終確認)
これが最も確実です。特に深夜営業を考えている場合は、管轄の警察署(生活安全課)や、専門の行政書士に調査を依頼してください。
「用途地域は商業地域だけど、条例で定められた『住居集合地域』に該当するため不可」といった、地図だけでは分からない落とし穴も存在します。私たち専門家は、そういった細かい法令や条例まで全てチェックします。
▶ご参考:横浜市 – 行政地図情報提供システム(i-マッピー)
まとめ:物件契約は「調べ終わってから」が鉄則
飲食店営業許可や深夜営業の届出において、用途地域の間違いは「修正がきかない」致命的なミスになります。
- 内装工事をしてしまった。
- 厨房機器を買ってしまった。
- 契約金を払ってしまった。
その後に「ここでは営業できません」と言われたら、夢が一瞬で悪夢に変わります。
「いい物件はすぐに埋まってしまう!」
その焦る気持ち、痛いほど分かります。店長時代の私もそうでした。でも、だからこそ、一呼吸置いて「法的な調査」を挟む冷静さを持ってください。
もしご自身での調査が難しいと感じたり、不安があったりする場合は、契約前にぜひご相談ください。横浜市を中心に、神奈川県内・東京都内の物件調査から申請手続きまで、あなたの夢を守るためのサポートをさせていただきます。

お店の種類や状況、準備の進行具合によって、必要な調査は様々です。「この物件で本当に大丈夫?」「食品衛生責任者の資格はいつ取ればいい?」など、具体的なご相談やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。








