「ピンポーン。〇〇警察署の者ですが、少しよろしいでしょうか?」
もし、あなたの家のインターホンが鳴り、画面の向こうに警察官が立っていたら…。「まさか自分が?」と思いますよね。しかし、フリマアプリやネットオークションでの取引が日常になった今、悪気なく始めたビジネスが、気づかぬうちに法律違反(いわゆる「うっかり違反」)になっているケースが後を絶ちません。
こんにちは!元「遊べる本屋」店長の行政書士、栗原です。私のお店も、お客様にワクワクしてもらう「楽しい場所」であると同時に、万引き対策や消防法の遵守など、厳しいルールに守られた「安全な場所」でなければなりませんでした。「楽しい」と「安全」は、ビジネスの両輪なのです。
そこで今回は、あえて少しだけ怖い話をします。それは「古物商許可、取らないとどうなる?」という、すべての個人事業主が知っておくべき現実です。これは脅しではありません。あなたのビジネスと未来を守るための、大切な「転ばぬ先の杖」となる知識です。

あなたは大丈夫?「うっかり違反」に陥る典型的な3つのパターン
「自分は大丈夫」と思っている人ほど、危険な橋を渡っていることがあります。まずは、どのような行為が「うっかり違反」に繋がるのか、典型的なパターンを見ていきましょう。
パターン1:「趣味の延長」のつもりが…本格せどり型
最初は、家にある不用品を売るだけだった。しかし、だんだん「安く仕入れて高く売る」のが面白くなり、気づけば毎月数十万円の売上げに。しかし、本人の意識は「あくまで趣味の延長」のまま。これが最も多い「うっかり違反」の入り口です。利益が出て、反復継続して仕入れ・販売を行えば、それは紛れもない営業活動であり、古物商の許可が必要になります。
パターン2:「1回だけなら」が命取り…スポット仕入れ型
普段は自分の不用品しか売らないけれど、たまたま訪れたリサイクルショップで、プレミア価格で売れそうなお宝を発見。「今回だけ特別に」と仕入れて転売。たとえ1回でも、「転売して利益を得る目的」で仕入れたのであれば、それは古物営業と見なされる可能性があります。「1回だから」という言い訳は通用しないのです。
パターン3:「友達からだから」は通用しない…知人間取引型
友人から「ゲーム機、代わりに売ってくれない?手数料払うから」と頼まれ、フリマアプリで販売。これも実は、友人から商品を「買い取って(あるいは委託を受けて)」販売していることになり、古物営業に該当する可能性があります。善意の行動が、結果として無許可営業になってしまう悲しいケースです。
無許可営業が発覚した先にある、恐るべき「末路」
では、古物商許可、取らないとどうなるのでしょうか。もし無許可営業が発覚した場合、あなたのビジネスにはどのような未来が待っているのか。その「末路」を、段階を追ってリアルに解説します。
フェーズ1:警察からの突然の連絡
ある日突然、あなたの元に警察署から電話や訪問があります。多くの場合、盗品捜査の過程や、第三者からの通報がきっかけです。まず、任意での事情聴取を求められ、「どのような目的で、何を、どこから仕入れて、どう売っていたか」を詳細に聞かれます。この段階で「うっかり違反」に気づき、真摯に対応すれば、厳重注意で済むケースもあります。しかし、ここで嘘をついたり、悪質だと判断されたりすると、事態は次のフェーズへ進みます。
フェーズ2:「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」という現実
古物営業法第三十一条には、無許可営業に対して「三年以下の懲役又は百万円以下の罰金」という、非常に重い罰則が定められています。これは決して単なる脅し文句ではありません。実際に逮捕され、罰金刑が科されるケースも発生しています。
▶ ご参考:e-Gov法令検索 古物営業法 第三十一条
フェーズ3:ビジネス生命の危機と信用の失墜
刑事罰だけでなく、ビジネスそのものにも深刻な影響が出ます。例えば、フリマアプリの運営元に警察から連絡が行き、あなたのアカウントが永久に凍結される可能性があります。一度「違反者」として認定されてしまうと、その情報はネット上に残り続け、築き上げてきた評価や信用は一瞬で地に落ちるでしょう。
フェーズ4:将来への扉が閉ざされる「欠格事由」という最悪の「末路」
これが、古物商許可、取らないとどうなるかという問いに対する、最も重い答えです。無許可営業で罰金以上の刑に処せられると、あなたはその日から「欠格事由」に該当してしまいます。その結果、刑の執行が終わってから5年間は、古物商の許可を申請することすらできなくなるのです。つまり、「ごめんなさい、これからは真面目にやります」と思っても、5年間はビジネスの再スタートが法的に閉ざされるという、まさに最悪の「末路」を迎えることになります。
そうなる前に!「転ばぬ先の杖」としての古物商許可
ここまで読んで、「怖い」と感じたかもしれません。しかし、これらのリスクは、たった一つの行動で全て回避できます。それが「古物商許可」の取得です。
なぜ許可取得が最強のリスクヘッジなのか
許可証は、警察から連絡が来る心配をせず、堂々とビジネスに打ち込める「最強のお守り」です。さらに、お客様に対して「私は法律を守る信頼できる事業者です」と公に証明するものでもあります。このように、許可取得は、リスクを回避する「守り」であると同時に、ビジネスの信用を高める「攻め」の戦略でもあるのです。
申請は怖くない!基本ステップのおさらい
「でも、申請が難しそう…」と感じるかもしれませんが、基本はシンプルです。
- 相談: まずは営業所(自宅でも可)を管轄する警察署に電話で相談。
- 要件確認: 自分が欠格事由に当てはまらないかセルフチェック。
- 書類準備: 住民票などの必要書類を集める。(自分で十分に可能です!)
- 申請: 書類と手数料(19,000円 ※2025年7月現在)を持って窓口へ。
もちろん、時間がない方や手続きに不安がある方は、私達のような行政書士に依頼する、という選択肢もあります。
▶ ご参考:警視庁 古物商許可申請
まとめ – 安心して「好き」を続けるために
「古物商許可、取らないとどうなる?」
その答えは、「ビジネスの可能性を自ら潰し、取り返しのつかない大きなリスクを背負うことになる」です。
今回、あえて厳しい現実についてお話ししたのは、あなたの「好き」という気持ちから始まった大切なビジネスを、一瞬の「うっかり違反」で失ってほしくないからです。正しい知識は、あなたを守る盾になります。
「古物商許可、取らないとどうなる?」と不安を抱え続けるのではなく、「許可を取って、安心してビジネスを成長させる」未来を選んでほしいと、心から願っています。
「自分のこのケースは大丈夫?」と少しでも不安に感じたら、警察から連絡が来る前に、ぜひ一度ご相談ください。専門家として、あなたのビジネスが安全で楽しい航路を進めるよう、全力でサポートさせていただきます。
【ご注意】 この記事は、2025年6月時点の情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。個別の事案に対する法的アドバイスではありません。古物商の許可申請にあたっては、必ず最新の法令・条例をご確認の上、必要に応じて管轄の行政機関や専門家にご相談ください。