「民泊を始めたはいいけど、予約がさっぱり…」 「これから民泊を開業したいけど、どうやってアピールすればいいの?」 「そもそも民泊の始め方って、何だか難しそう…」
数ある宿泊施設の中から、あなたの物件を選んでもらうのは至難の業。その成否を分けるのが、民泊プラットフォームに掲載する「リスティング」の魅力です。
と、いきなり専門用語から始めてしまいましたが、難しく考える必要はありません。「リスティング」とは、いわばあなたの民泊物件の「ウェブ上の紹介ページ」のこと。写真や説明文、料金、ハウスルールなどをまとめた、ゲストが予約前に必ず目にする、いわば物件の「顔」です。
この「顔」の作り方一つで、予約数は劇的に変わります。
こんにちは!元「遊べる本屋」店長の行政書士、栗原です。
「本屋の店長がなぜ民泊の話を?」と不思議に思われましたか?実は、本屋も民泊も「選ばれる」ための仕掛け作りという点では、驚くほど共通点があるのです。平台に並ぶ無数の本の中から、お客様が思わず一冊を手に取る。その「引力」を生み出すのが、表紙のデザインであり、心を掴むキャッチコピーでした。
民泊のリスティングも同じです。無数の物件情報の中から「ここに泊まりたい!」と思ってもらうには、第一印象がすべて。私は行政書士として、民泊の開業に必要な法律や許可申請といった手続きの専門家であると同時に、「人の心を動かす見せ方」を追求してきた元書店員でもあります。
このブログでは、そんな私の経験を掛け合わせ、「いいね!」が殺到する魅力的なリスティング作成の法則を、誰にでも分かりやすくお伝えします。法的な話も交えながら、あなたの民泊運営を成功に導くヒントが満載です。

法則1:「なぜ、あなたの民泊?」物語で惹きつけるコンセプトの法則
まず、一番大切なことからお話しします。あなたの民泊は、ゲストに何を提供できる場所ですか?
「え、寝る場所とシャワーですが…」
もちろんそれも正解です。しかし、それだけでは「選ばれる理由」にはなりません。必要なのは、ゲストが共感し、体験したくなるような「物語」、つまりコンセプトです。
私が店長だった頃、「遊べる本屋」では、ただ本を並べるだけではありませんでした。『深夜にこっそり読みたい背徳の小説フェア』とか、『明日、会社を休むための言い訳集』といった風に、テーマと物語性を持たせて陳列していました。すると、お客様は「なんだろう?」と足を止め、楽しんで本を選んでくれるのです。
民泊も、この「物語」が強力な武器になります。
どんな人に泊まってほしいですか?(ターゲット設定)
- アクティブなインバウンドの若者グループ?
- 静かに過ごしたいカップル?
- 子供連れのファミリー?
その人たちに、どんな体験をプレゼントしたいですか?(体験価値)
- 「地元民しか知らない美味しいお店を巡る旅の拠点」
- 「窓から海を眺めながら、心ゆくまで読書に耽る休日」
- 「プロの料理人が使えるキッチンで、地元の食材を調理する楽しみ」
このように、ターゲットと提供価値を明確にすることで、あなたの民泊だけのユニークなコンセプトが生まれます。このコンセプトこそが、他の施設との決定的な差別化要因となり、あなたの物件のファンを生み出すのです。これは、これからの民泊の始め方において、最も重要な投資と言えるでしょう。
法則2:「百聞は一見に如かず」を極める!写真と空間演出の法則
さて、魅力的な物語(コンセプト)ができたら、次はその世界観を「見える化」する必要があります。リスティングページで最もゲストの目を引くもの、それは写真です。
本で言えば「表紙」。どんなに面白い内容でも、表紙がつまらなければ手に取ってもらえません。写真は、あなたの民泊の魅力を伝える最強の集客ツールです。
「いいね!」を生む写真のポイント
- プロに頼むか、徹底的にこだわる: スマートフォンの写真も綺麗になりましたが、やはりプロが撮る写真は空間の広がりや光の捉え方が違います。もし自分で撮るなら、広角レンズを使い、部屋が一番明るく見える時間帯(自然光がベスト)を狙いましょう。
- 清潔感が命: 写真からでも清潔感は伝わります。水回りはピカピカに、リネン類はシワなく整えて撮影しましょう。
- 「物語」を写し出す: コンセプトに合わせた小物を配置するのも効果的です。例えば「読書がテーマの部屋」なら、素敵なブックランプや読み心地の良さそうな椅子、数冊の本をさりげなく置いてみる。ゲストが「ここでこんな風に過ごしたいな」と想像できる一枚を撮ることが重要です。
- アメニティや設備も丁寧に: こだわりのコーヒーメーカー、質の良いタオル、高速Wi-Fiなど、ゲストが喜ぶ設備は積極的に写真で見せましょう。
空間演出も、本屋のディスプレイ作りと同じです。テーマカラーを決め、統一感を出す。地域の工芸品を飾って、その土地ならではの雰囲気を醸し出す。ちょっとした工夫で、部屋の印象は劇的に変わります。この空間作りこそが、民泊運営の醍醐味の一つです。



法則3:「かゆい所に手が届く」おもてなし情報と説明文の法則
素敵なコンセプトと写真でゲストの心を掴んだら、最後のひと押しは丁寧な説明文です。ここでは、単なる設備の羅列ではなく、「おもてなしの心」を文章で表現します。
ゲストが本当に知りたい情報とは?
- 周辺情報の具体性: 「駅徒歩5分」だけでなく、「駅から物件までの道のりには、24時間営業のスーパーと、美味しいパン屋さんがあります。夜遅くの到着でも安心ですよ」といった一言が、ゲストの不安を解消します。
- ハウスルールの伝え方: 「禁煙」「土足厳禁」といった禁止事項は、伝える必要があります。しかし、それだけだと冷たい印象に。「日本の伝統的な家屋の心地よさを味わっていただくため、玄関でお履物をお脱ぎください」のように、理由を添えてポジティブに伝えると、ゲストも気持ちよくルールを守ってくれます。
- インバウンド対応: 外国人観光客をターゲットにするなら、多言語対応は必須です。特に、家電の操作方法やゴミの分別ルールなどは、イラスト付きで分かりやすく説明するファイルを用意しておくと、非常に喜ばれます。日本政府観光局(JNTO)の発表する訪日外客数(2024年4月推計値)を見ても、多くの観光客が日本を訪れていることがわかります。彼らが安心して滞在できる環境を整えることは、良いレビューに繋がる重要なポイントです。
- あなたからのメッセージ: 「この町が大好きで、この家の魅力をたくさんの人に知ってほしくて民泊を始めました」といった、あなたの想いを伝えることも大切です。顔が見えるコミュニケーションが、ゲストに安心感と親近感を与えます。
これらのきめ細やかな情報提供と管理が、結果的に「また来たい」と思ってもらえるリピーターや、高評価のレビューに繋がるのです。副業として民泊を考えている方も、この「おもてなしの心」を忘れずに準備を進めましょう。
法則4:「そもそも、それってOK?」民泊運営の法的基盤と申請の法則
さて、ここまで「見せ方」の話をしてきましたが、忘れてはならないのが法律です。どんなに素敵な民泊も、法的な許可がなければ運営できません。「民泊の申請は難しい」というイメージがあるかもしれませんが、ポイントを押さえれば決して乗り越えられない壁ではありません。
行政書士として、ここが一番の腕の見せ所です。
日本で民泊を運営するには、主に3つの方法があり、それぞれ根拠となる法律が異なります。
種類 | 根拠法 | 主な特徴 | メリット | デメリット |
---|---|---|---|---|
新法民泊 | 住宅宿泊事業法 | 年間の営業日数が180日以内。届出制で始めやすい。 | ・比較的簡単な手続きで開業可能 ・住居専用地域でも運営できる場合がある | ・年間営業日数に上限がある ・自治体による独自ルール(上乗せ条例)がある |
旅館業民泊 | 旅館業法 | 営業日数に制限なし。本格的な事業として運営。 | ・365日営業が可能で収益性が高い ・事業としての安定感がある | ・許可取得のハードルが高い(施設の構造設備基準など) ・用途地域に制限がある |
特区民泊 | 国家戦略特別区域法 | 国が定めた特区内でのみ可能。 | ・2泊3日以上の滞在など一定の要件で運営可能 ・旅館業法より要件が緩和されている場合がある | ・実施されている地域が限定的 ・自治体ごとにルールが異なる |
どの法律に基づいて民泊を開業するかは、あなたの物件の立地や、どのような運営を目指すかによって変わってきます。例えば、「まずは副業として小さく始めたい」という方は新法民泊、「本格的なビジネスとして投資したい」という方は旅館業民泊、といった選択が考えられます。
これらの法律や自治体の条例は複雑に絡み合っており、ご自身で全てを調べて申請するのは、確かに骨が折れる作業です。消防法令や建築基準法など、他の法律も関係してきます。
何から手をつけて良いか分からない、という方は、まずは網羅的に情報がまとまっている観光庁の民泊制度ポータルサイト「minpaku」をご覧になることをお勧めします。ここで全体像を掴むだけでも、次に何をすべきかが見えてくるはずです。
また、各自治体は民泊に関する独自の条例(いわゆる上乗せ条例)を定めている場合が多く、これが申請を「難しい」と感じさせる一因でもあります。例えば、住宅地での営業可能日を週末のみに制限している地域もあります。ご自身の物件がある地域のルールを正確に把握することが、許可取得の第一歩です。各自治体のホームページで確認できますので、総務省の地方公共団体ホームページ等へのリンクなどから調べてみましょう。
まとめ:あなたの民泊は、一冊の本である
いかがでしたでしょうか。魅力的な民泊リスティングを作成するための4つの法則をご紹介しました。
- コンセプトの法則:「なぜ、あなたの民泊か」という物語を作る
- 写真と空間演出の法則:物語を「見える化」し、一瞬で心を掴む
- おもてなし情報の法則:「かゆい所に手が届く」情報で安心感を与える
- 法的基盤と申請の法則:正しい法律の知識で、土台を固める
これらは全て、私が本屋で「売れる一冊」を仕掛けた経験と、行政書士として数々の許認可申請に携わってきた知識から導き出した法則です。
あなたの民泊は、いわば「一冊の本」です。どんなに素晴らしい物語(空間)も、表紙(写真)や帯(説明文)が魅力的でなければ、手に取ってもらえません。そして、そもそも「本」として世に出すためのルール(法律)を守らなければ、書店に並ぶことすらできないのです。
民泊の開業や運営は、単なる不動産投資ではなく、あなたの個性や想いを形にするクリエイティブなビジネスです。この記事が、あなたの素晴らしい「本」を、多くの人に届けるための一助となれば幸いです。
民泊の開業準備や運営に関する法的なご相談、あるいは「自分だけのコンセプト作り」にお悩みでしたら、どうぞお気軽にお声がけください。元「遊べる本屋」店長の視点と、行政書士の専門知識を掛け合わせて、あなたの民泊という物語作りを全力でサポートさせていただきます。
こちらもご確認ください。→民泊事業申請について
【ご注意】 この記事は、2025年5月時点の情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。個別の事案に対する法的アドバイスではありません。民泊の開業・運営にあたっては、必ず最新の法令・条例をご確認の上、必要に応じて管轄の行政機関や専門家にご相談ください。