
こんにちは!行政書士の栗原です。
実は私、行政書士になる前は、あの「遊べる本屋」で店長をしていた経験があります。雑貨や本に囲まれて、お客様がワクワクするようなお店を作るのって、本当に楽しいんですよね。その気持ち、すごくよく分かります。
最近はメルカリなどのフリマアプリで、誰もが手軽に「自分のお店」を持てるようになりました。中には、それを本業として大きな成功を収めている方もいらっしゃいます。そういったトップセラーの方々が、当たり前のように取得しているのが「古物商許可」。
「え、メルカリで売るだけなのに許可なんて必要なの?」 「法律を守るためだけで、面倒な手続きなんでしょ?」
そう思われるかもしれません。しかし、それは少し違います。なぜメルカリで成功する人は古物商許可を取るのか? それは、単にコンプライアンスのためだけではなく、ビジネスを次のステージへ引き上げるための「戦略的な一手」だからに他なりません。
この記事では、元店長の視点と行政書士の専門知識を交えながら、古物商の許可取得があなたのビジネスをいかに加速させるか、3つの具体的な理由を分かりやすく解説していきます。ライバルに一歩差をつけたいと考えているあなた、ぜひ最後までお付き合いください。
そもそも、どんな場合に古物商許可が必要なの?
本題に入る前に、基本の「き」からおさらいしましょう。そもそも、どんな場合に古物商の許可が「必要」になるのでしょうか。
一言でいうと、**「中古品を、ビジネス(営業)として仕入れて転売する場合」**です。
古物営業法という法律では、盗品の流通防止などを目的に、中古品の売買を営業として行う際には、都道府県の公安委員会(窓口は警察署)から許可を得るよう定められています。
ポイントは「ビジネスとして」という部分です。
許可が不要なケース:
- 自分が使っていたものを売る(例:サイズが合わなくなった服を売る)
- 無償でもらったものを売る
- 自分が海外で買ってきたものを売る
許可が必要なケース:
- 転売目的で中古品を仕入れて売る(いわゆる「せどり」)
- 中古品を買い取って、修理して売る
- 中古品を買い取って、使える部品を売る
メルカリでの取引の多くは、この「転売目的で中古品を仕入れて売る」行為に該当する可能性があります。もし無許可で営業を行うと、**「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」**という重い罰則が科される恐れがあります。
「知らなかった」では済まされない、大切なルールなんですね。
より詳しい法律の内容については、警視庁のウェブサイトやe-Gov法令検索で原文を確認することもできますので、参考にしてみてください。
▶ご参考:警視庁 – 古物営業
▶ご参考:e-Gov法令検索 – 古物営業法
さて、基本を押さえたところで、いよいよ本題です。許可取得がもたらす、守り以上の「攻め」のメリットを見ていきましょう。
理由1:圧倒的な「社会的信用」が手に入る
一つ目の理由は、なんといっても「社会的信用」の獲得です。これは、お客様との関係だけでなく、様々なビジネスシーンでボディブローのように効いてきます。
お客様からの信頼度が格段にアップ
考えてみてください。同じ商品が同じ価格で売られていたとして、片方の出品者のプロフィールには「〇〇県公安委員会 古物商許可 第1234567890号」と記載があり、もう片方には何もない。あなたはどちらから買いたいと思うでしょうか?
多くの方が、許可番号が記載されている方を選ぶはずです。
古物商許可は、警察署の審査を経て、法律で定められた基準(欠格事由に該当しないなど)をクリアした事業者であることの公的な証明です。これがあるだけで、「この人はきちんと法律を守ってビジネスをしているんだな」という安心感につながり、購入の後押しになります。
また、許可を取得すると、営業所やウェブサイトに「標識」を掲示する義務があります。メルカリなどのインターネットを利用して営業を行う場合、そのサイトのURLを警察署に届け出る必要があり、プロフィールなどに許可情報を記載することは、お客様への信頼性を示す上で非常に重要です。この届出については、各都道府県警察のウェブサイトで詳しく解説されています。
▶ご参考:神奈川県警察 – 古物商のホームページを利用した取引に関する規定の整備について
ビジネスの幅を広げる「信用のパスポート」
この信用は、お客様相手だけにとどまりません。例えば、あなたが事業を拡大し、卸業者と取引をしたり、金融機関から融資を受けたりする場面を想像してみてください。
「古物商許可」は、あなたが単なる個人ではなく、行政から認められた「事業者」であることを示す、いわば信用のパスポート。これが、ビジネスの可能性を大きく広げてくれるのです。

理由2:ライバルが知らない「仕入れルート」が開拓できる
なぜメルカリで成功する人は古物商許可を取るのか? その最も直接的な答えが、この「仕入れルートの拡大」にあると言っても過言ではありません。
古物商許可を持つ事業者だけが参加を許される、特別な場所があります。それが**「古物市場(業者間オークション)」**です。
古物市場とは、全国各地で開かれている、古物商許可を持つプロの業者だけが参加できる卸売市場のこと。リサイクルショップや中古品販売業者は、ここで商品を仕入れたり、在庫を売却したりしています。
古物市場に参加するメリット
- 安定した仕入れ: 一般の店舗を回る「せどり」と違い、一度に大量の商品を見ることができ、効率的かつ安定的に商品を仕入れられます。
- 低コストでの仕入れ: 業者間の取引なので、市価よりも安く商品を仕入れられる可能性が高まります。利益率の向上に直結しますね。
- 思わぬお宝との出会い: 一般には出回らないようなレアな商品や、専門的な品物に出会えるチャンスがあります。
私が店長だった頃も、珍しい本や雑貨を求めて、業者専門の市場に足を運んだものです。あの独特の熱気と、宝探しのようなワクワク感は、ビジネスの原動力になりました。
メルカリでの販売は、いかに安く、良い商品を仕入れるかが成功の鍵を握ります。一般の人がアクセスできない仕入れルートを持てることは、ライバルに対する計り知れないアドバンテージになるのです。メルカリで成功する人が古物商許可を取るのは、この競争優位性を手に入れるためでもあるのです。

理由3:ビジネスの可能性を広げる「商材の多様化」
3つ目の理由は、扱える商材の幅が大きく広がり、ビジネスの可能性そのものを広げられる点です。
古物商の許可申請をする際には、メインで取り扱う「品目」を選びます。古物営業法では、以下の13品目が定められています。
品目分類 | 具体例 |
美術品類 | 書画、彫刻、工芸品など |
衣類 | 和服、洋服、その他の衣料品 |
時計・宝飾品類 | 時計、眼鏡、宝石類、装身具類、貴金属類など |
自動車 | その本体及び部品 |
自動二輪車及び原付 | その本体及び部品 |
自転車類 | その本体及び部品 |
写真機類 | 写真機、光学器など |
事務機器類 | レジスター、タイプライター、計算機、謄写機など |
機械工具類 | 電機類、工作機械、土木機械、化学機械、工具など |
道具類 | 家具、じゅう器、運動用具、楽器、CD、ゲームソフトなど |
皮革・ゴム製品類 | カバン、靴など |
書籍 | |
金券類 | 商品券、乗車券、郵便切手など |
許可さえ取得すれば、これらの品目の中から、あなたの得意な分野や、新たに挑戦したい分野の中古品を、堂々とビジネスとして扱うことができます。
- 最初は得意な「古着」から始めたけれど、次は「アンティーク時計」にも挑戦してみたい。
- 最近人気の「トレーディングカード」の取り扱いも本格的に始めたい。
こんな風に、あなたの興味や市場のトレンドに合わせて、ビジネスの舵を柔軟に切ることができるのです。一つのジャンルに依存するリスクを分散し、収益の柱を複数持つことは、長期的にビジネスを安定させる上で非常に重要です。メルカリで成功する人が古物商許可を取るのは、こうした事業の多角化と安定化を見据えているからなのです。
気になる許可申請、自分でできる?
ここまで読んで、「よし、自分も許可を取ろう!」と思った方もいるかもしれません。次に気になるのは、「申請って難しいの?自分でできる?」という点ですよね。
結論から言うと、ご自身で申請することは可能です。
大まかな流れは以下の通りです。
- 要件の確認: 自分が許可を受けられるか(欠格事由に該当しないか)などを確認する。
- 書類の収集・作成: 申請書、住民票、身分証明書など、必要な書類を揃える。
- 警察署へ申請: 営業所の所在地を管轄する警察署の防犯係(生活安全課)に書類を提出する。
- 審査: 警察署による審査(約40日程度)。
- 許可証の交付: 審査に通れば、許可証が交付されます。
申請の注意点
ご自身で申請する際に、特に注意したいのが以下の3点です。
- 欠格事由: 過去に特定の犯罪で罰金刑以上になったことがある場合など、許可が受けられない条件(欠格事由)が法律で定められています。
- 営業所の確保: 中古品の管理を行う「営業所」が物理的に必要です。賃貸物件やご自宅を営業所として申請する場合は、大家さんの使用承諾書が必要になるなど、注意が必要です。
- 管理者の選任: 各営業所に、業務を適正に実施するための「管理者」を一人選任する必要があります。
これらの要件は、個々の状況によって判断が難しいケースもあります。例えば、「自宅を営業所にしたいけど、集合住宅だから不安…」といったご相談は非常に多いです。

もし、手続きに少しでも不安を感じたり、平日に警察署へ行く時間を確保するのが難しかったりする場合は、専門家である行政書士に相談するのも一つの有効な手段です。
ちなみに、許可を取得した後は、取引の記録を「古物台帳」に記載する義務なども発生します。許可取得はゴールではなく、信頼される事業者としてのスタートラインなのです。
まとめ:古物商許可は、未来への「戦略的投資」
改めて、なぜメルカリで成功する人は古物商許可を取るのか? その3つの理由を振り返ってみましょう。
- 社会的信用の獲得: お客様や取引先からの信頼を得て、ビジネスの土台を強固にする。
- 仕入れルートの拡大: プロだけの「古物市場」に参加し、ライバルに差をつける。
- 扱える商材の多様化: ビジネスの幅を広げ、安定した収益基盤を築く。
これらは、目先の利益だけを追うのではなく、長期的な視点でビジネスの成長を考えているからこその選択です。古物商許可は、単なる法律上の義務やコストではありません。あなたのメルカリビジネスを加速させ、より大きな成功へと導くための、極めて有効な「戦略的投資」なのです。
私が「遊べる本屋」で大切にしていたのは、お客様に「また来たい」と思ってもらうことでした。そのためには、面白い商品を揃えるだけでなく、安心して買い物を楽しめる空間作りが不可欠でした。それは、メルカリというオンラインの「お店」でも全く同じです。
古物商許可を取得し、お客様に安心感を提供することは、あなたの「お店」のファンを増やし、継続的な成長を支える礎となるはずです。
この記事が、あなたのビジネスの一助となれば幸いです。
お店の種類や状況によって、必要な準備や手続きは様々です。具体的なご相談や、「自分の場合はどうなんだろう?」といったご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「お店作り」の夢を全力でサポートさせていただきます。