カフェの営業許可|イートイン(飲食店営業)とテイクアウト(菓子製造業)の違い

こんにちは!行政書士の栗原です。

2019年の消費税改正で、「イートインは10%、テイクアウトは8%」というルールが始まってから、私たちにとって「店内で食べるか、持ち帰るか」の違いは、とても身近なものになりましたよね。

しかし、これから自分のお店、特にカフェの開業を考えているあなたにとって、この違いは税金の話だけでは終わりません。実は、保健所に申請する営業許可の種類も、イートインとテイクアウトでは全く別物になるケースがあるのです。

「え、一つの店なのに、許可も別々なの?」

そうなんです。私が店長だった「遊べる本屋」での経験をお話ししますね。店内をじっくり回って、何時間も立ち読みしながらお気に入りの一冊を探すお客様と、「あの新刊ありますか?」と目的買いでサッと購入して帰るお客様。このお二方では、お店での時間の過ごし方が全く違います。そして、私たちがすべき準備も、実は少しずつ違いました。

それと同じように、カフェでゆっくり過ごすお客様と、美味しいお菓子を家に持ち帰るお客様とでは、オーナーが準備すべき「許可」という手続きも変わってくるのです。

今回は、あなたの理想のカフェの営業許可について、どの許可をどう組み合わせれば良いのか、分かりやすく解説していきますね。


カフェ開業の二大巨頭。「飲食店営業」と「菓子製造業」を知る

まず、カフェの営業許可における二人の主役をご紹介します。それが「飲食店営業許可」と「菓子製造業許可」です。

イートインの守護神「飲食店営業許可」

これは、施設内で調理した飲食物をお客様にその場で提供するための許可です。

具体例:淹れたてのコーヒー、お皿に盛り付けたケーキ、店内で調理したサンドイッチやパスタなど。

店内に客席を設けて、お客様に飲食してもらうスタイルのカフェであれば、この飲食店営業許可が全ての基本となります。いわば、カフェ開業のスターティングメンバーですね。

テイクアウトの専門家「菓子製造業許可」

一方こちらは、パンやケーキ、クッキーといったお菓子を「製造」し、包装して持ち帰り用に販売するための許可です。

「あれ?普通のカフェのレジ横で、クッキーを売ってるのは?」 そう、ここが少しややこしいポイントです。実は、飲食店営業許可だけでも、店内で作ったものを「簡易な包装」で持ち帰ってもらうことは可能です。

しかし、「あらかじめ包装された製品を、別の場所で販売する(卸売り)」、「通販で全国に発送する」といった本格的なテイクアウト販売を行う場合は、この菓子製造業許可が必要になります。この条件の違いが、ビジネスの幅を大きく左右するのです。

▶ご参考:厚生労働省 – 営業許可業種の見直しについて


あなたのカフェはどのタイプ?営業スタイル別・許可の組み合わせ

では、あなたの理想のカフェには、どの許可が必要なのでしょうか。代表的な3つのパターンについて、図解だけでなく、文章でも詳しく見ていきましょう。

パターンA:イートイン中心のクラシックなカフェ

カウンターで注文したコーヒーとケーキを、窓際の席でゆっくり楽しんでもらう…。そんな、お客様が店内で過ごす時間を大切にするカフェですね。

  • 必要な許可飲食店営業許可
  • できること:店内で調理したあらゆる飲食物(コーヒー、紅茶、食事、デザートなど)を、その場で提供できます。また、お客様の求めに応じて、食べ残したケーキを箱に入れたり、コーヒーをテイクアウトカップで提供したりといった「その場での簡易な包装」は、この許可の範囲内です。
  • できないこと:あらかじめギフト用に包装したクッキーの詰め合わせを販売したり、他の雑貨屋さんにお店の焼き菓子を卸したりすることは、原則としてできません。
  • ポイントカフェの営業許可の最も基本的な形です。まずはこのスタイルから始める、という方も多いでしょう。

パターンB:テイクアウト専門の焼き菓子店(ベイクショップ)

お店のドアを開けると、バターの甘い香りがふわっと広がる。棚には、きれいにラッピングされたクッキーやパウンドケーキが並んでいる…。そんな、焼き菓子専門のテイクアウトのお店です。

  • 必要な許可菓子製造業許可
  • できること:クッキー、ケーキ、パンなどを製造し、包装して販売できます。ラベルを貼って他の店舗に卸したり、インターネットで通信販売したりすることも可能です。
  • できないこと:原則として、お客様に店内で飲食させることはできません。淹れたてのコーヒーを提供して、椅子に座って飲んでもらう、といったサービスはNGです。
  • ポイント:この許可を取得する場合、食品表示法に基づいたラベル(原材料、アレルギー表示、消費期限など)の作成も必要になります。お店のブランドを広めたい場合に有効な許可です。

パターンC:イートインもテイクアウトも!なハイブリッド型カフェ

店内でランチやコーヒーを楽しむお客様もいれば、お土産に焼き菓子のギフトボックスを買って帰るお客様もいる。まさに、現代のカフェの理想形かもしれません。

  • 必要な許可飲食店営業許可菓子製造業許可
  • できること:上記AとBの両方が可能になります。イートインのお客様へのサービスと、本格的なテイクアウト商品の販売を両立でき、ビジネスの可能性が大きく広がります。
  • できないこと:特にありませんが、両方の許可基準を満たす必要があります。
  • ポイント:このスタイルを目指す場合、開業準備における最大の関門が待っています。それが次にお話しする「厨房の区画分け」です。

1つの厨房で2つの許可を取る、という難関

さて、多くの方が目指すであろう「パターンC:ハイブリッド型」。ここで、開業準備における最大の壁が立ちはだかります。それは、「1つの厨房で、飲食店営業と菓子製造業の2つの許可を同時に取得する」という課題です。

これがなぜ難しいかというと、保健所は、異なる種類の食品を扱う際の交差汚染(菌などが移ること)を非常に警戒するからです。そのため、1つの厨房で2つの許可を得るには「それぞれの作業を行う場所を、明確に区画分けしなさい」という指導が入ることが一般的です。

例えば、

  • 「ケーキを盛り付ける作業台」と「クッキーを包装する作業台」を物理的に分ける。
  • それぞれの作業専用のシンクを設ける。
  • 場合によっては、仕切り壁の設置を求められる。

といった条件が課される可能性があります。この「区画分け」のルールは、自治体や保健所の担当者によって解釈が異なる場合があるため、物件の契約や内装工事を始める前に、必ずお店の図面を持って事前相談に行くことが、絶対に不可欠です。

▶ご参考:横浜市 – 営業許可申請の手引(飲食店営業・喫茶店営業)


まとめ:許可の組み合わせは、あなたの夢のカタチそのもの

カフェの営業許可について、ご理解いただけたでしょうか。

  • イートインが中心なら「飲食店営業許可」
  • 本格的なテイクアウトもするなら「菓子製造業許可」も必要
  • 両方やるなら、厨房の「区画分け」が最大のポイント

どの許可を選ぶか、というのは、単なる手続きの話ではありません。それは、「あなたのお店で、お客様にどんな時間を過ごしてほしいか」という、カフェのコンセプトそのものを映し出す鏡なのです。

店内でゆっくり過ごしてほしいのか、美味しいお菓子を家に持って帰って笑顔になってほしいのか。あなたの夢のカタチに合わせて、最適な許可の組み合わせを選んでいきましょう。


お店の物件の状況や、提供したいメニューの内容によって、必要な許可の条件や手続きは本当に様々です。ご自身のケースで「この場合はどうなるの?」「厨房の区画分けが難しい…」といった具体的なご相談やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「夢のカフェ作り」を全力でサポートさせていただきます。

飲食店営業許可についてはこちらもご覧ください。


Warning

この記事は、2025年9月時点の情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。個別の事案に対する法的アドバイスではありません。飲食店の許可申請にあたっては、必ず最新の法令・条例をご確認の上、必要に応じて管轄の行政機関や専門家にご相談ください。

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    ‐著作権相談員

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