こんにちは!行政書士の栗原です。
自分のお店を出すと決めたら、どんな内装にしようか、どんな素敵なメニューを提供しようか、考えるだけでワクワクしますよね。私も「遊べる本屋」の店長時代、どの本をどの棚に置くか考えるのが、最高に楽しい時間でした。
しかし、その楽しいお店作りを根底から支える、とても重要な存在がいます。それが、今回ご紹介する「食品衛生責任者」と「防火管理者」という、お店の安全を守る二人のガーディアン(守護者)です。
「資格って、なんだか難しそう…」「講習とか面倒だな…」
そう思う気持ち、よく分かります。でも、この二つの資格は、あなたの飲食店開業に不可欠なだけでなく、お客様からの信頼を得るための大切な証でもあるのです。今回は、飲食店開業に必要な資格について、取得方法から届出の流れまで、分かりやすく解説していきますね。

食の安全を守るガーディアン「食品衛生責任者」
まず一人目のガーディアンは、食中毒などを防ぎ、お店の衛生管理を担う「食品衛生責任者」です。
どんなお店に必要?→ほぼ全ての飲食店で「1店舗に1名」が必須!
カフェ、レストラン、居酒屋、キッチンカー…。お客様に飲食物を提供するお店は、原則として必ず各店舗に1名以上、食品衛生責任者を置かなければならない、と法律で定められています。これは、あなたの開業計画における絶対条件の一つです。
どうすればなれるの?資格取得への3つのルート
食品衛生責任者になるための道は、主に3つあります。
- エリートコース(講習免除) 医師、歯科医師、薬剤師、栄養士、そして調理師など、特定の国家資格を持っている方は、講習を受けなくても食品衛生責任者になることができます。
- 標準コース(養成講習会を受講) ほとんどの方がこのコースを辿ります。各都道府県の食品衛生協会が実施している「養成講習会」を1日受講することで、資格を取得できます。 「試験は難しいの?」と心配される方もいますが、講習の内容をしっかり聞いていれば、ほとんどの方が合格できる内容ですのでご安心ください。
- eラーニングコース(オンライン受講) ご自宅などのPCやスマートフォンから受講できる形式です。会場へ行く必要がなく、自分のペースで学習を進められるのが大きなメリットです。
お住まいの地域の食品衛生協会のウェブサイトで、講習会の日程や申し込み方法を確認してみましょう。
▶ご参考:公益社団法人神奈川県食品衛生協会
手続きはいつ?→飲食店営業許可の申請と同時に
資格を取得したら、その届出はいつするのでしょうか。これは、お店の飲食店営業許可を保健所に申請する際に、申請書の「食品衛生責任者」の欄に、資格を持つ人の名前を記入して提出するだけです。別の特別な手続きが必要なわけではないので、ご安心を。
炎と命を守るガーディアン「防火管理者」
二人目のガーディアンは、火災の発生を防ぎ、万が一の際にお客様やスタッフの命を守る「防火管理者」です。
うちのお店にも必要?対象となる条件をチェック!
食品衛生責任者とは異なり、防火管理者はすべてのお店に必要というわけではありません。 必要になるかどうかは、「お店の収容人数」によって決まります。
- お店の収容人数 = お客様の席数 + 従業員の数
- この合計が30人以上の場合に、防火管理者の選任が必要になります。
「収容人数」には従業員も含まれる、という点が重要なポイントです。例えば、客席が25席でも、厨房とホールにスタッフが合計5人いれば、「30人」となり、防火管理者が必要になります。
どうすればなれるの?講習を受けて資格を取得
防火管理者も、講習を受けることで資格を取得できます。講習は、お店の規模(延べ面積)によって2種類に分かれています。
- 甲種(こうしゅ):延べ面積300㎡以上など、比較的大きなお店が対象(講習は約2日間)
- 乙種(おつしゅ):延べ面積300㎡未満のお店が対象(講習は約1日間)
多くの飲食店は「乙種」で問題ないでしょう。この講習は、地域の消防署や、消防署から委託された機関が実施しています。
▶ご参考:一般財団法人日本防火・防災協会
手続きはいつ?→お店がオープンするまでに消防署へ
資格を取得し、お店の防火管理者として選任したら、「防火管理者選任(解任)届出書」という書類を作成し、管轄の消防署へ提出します。これは、飲食店営業許可とは別の手続きとして、消防署に対して行う必要があります。
まとめ:二人のガーディアンは、あなたの夢の守り神
飲食店開業に必要な資格である、二人のガーディアンについて、ご理解いただけたでしょうか。
資格の名称 | 食品衛生責任者 | 防火管理者 |
役割 | 食の安全を守る | 火災から命を守る |
必要な条件 | ほぼ全ての飲食店 | 収容人数が30人以上 |
資格の取り方 | 食品衛生協会の講習会など | 消防署等の講習会 |
届出先 | 保健所(営業許可申請と同時) | 消防署(選任後に届出) |
一見すると、これらの資格取得や届出は、開業準備における面倒なタスクに見えるかもしれません。しかし、これらは「お客様の安全を守る」という、お店を営む上での最も基本的な約束を、形にしたものです。
私が店長だった本屋でも、地震や火災に備えた避難訓練は欠かせませんでした。お客様に安心して楽しい時間を過ごしてもらう。その土台作りこそ、オーナーの大切な仕事なのです。
この二人のガーディアンは、きっとあなたの素晴らしいお店を、末永く守ってくれる存在になるはずです。

お店の規模や業態、物件の状況によって、必要な資格や準備は様々です。ご自身のケースで「私のお店の場合は、どちらの防火管理者が必要?」「講習はどこで受けられる?」といった具体的なご相談やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「お店作り」を全力でサポートさせていただきます。