こんにちは!行政書士の栗原です。
「よし、理想の物件が見つかった!さあ、内装工事を始めて、夢の厨房を作るぞ!」 その気持ち、めちゃくちゃ分かります!壁の色は?カウンターの素材は?考えるだけでワクワクしますよね。私も「遊べる本屋」の店長時代、棚の配置換えをする前夜は、遠足前の子供みたいに眠れませんでした。
しかし、そのワクワク感だけで突っ走ってしまうと、後で「まさか!」の落とし穴にはまることがあります。それが、飲食店営業許可を取得するための保健所の設備基準です。特に厨房は、お店の心臓部であると同時に、保健所が最も厳しくチェックする場所。「かっこいいデザインにしたけど、これじゃ許可が下りません…」なんてことになったら、目も当てられませんよね。
今回は、そんな悲劇を避けるため、内装工事を始める前に絶対に知っておくべき、保健所の設備基準をクリアする「通る」厨房設計の基礎知識と、ちょっとした「交渉術」(=事前相談の重要性)について、元店長行政書士として徹底解説します!

なぜ工事「前」の知識が重要? 保健所の「後出しNG」は避けたい!
なぜ、内装工事を始める前に保健所の基準を知っておくことが、そんなにも重要なのでしょうか。理由はシンプルです。
理由①:許可が下りなければ、お店は開けない
どんなにおしゃれで機能的な厨房を作っても、保健所が定める最低限の衛生条件を満たしていなければ、飲食店営業許可は絶対に下りません。許可がなければ、当然、お店を開くことはできません。これは開業における大前提です。
理由②:工事後の手直しは、時間も費用も大損害
もし、工事が終わってから保健所の検査で「シンクの数が足りません」「手洗い場の位置を変えてください」といった指摘を受けたら…?壁を壊したり、配管をやり直したり、想像するだけでゾッとしますよね。追加の工事費用はもちろん、オープン日が大幅に遅れてしまうという、二重のダメージを受けてしまいます。この準備不足が、開業計画全体を狂わせることも少なくありません。
だからこそ、設計段階で「通る」設計を知っておくことが、スムーズな開業への最短ルートなのです。
保健所はココを見ている!「通る」厨房設計のための絶対条件リスト
では、保健所は具体的に厨房のどこを、どんな基準で見ているのでしょうか?細かい点は自治体によって異なりますが、ここでは横浜市などの首都圏で共通して重要視されるポイントを中心に、リストアップしてみましょう。
① 衛生管理のキホン:「シンク」と「手洗い設備」
- シンクの数:原則として2槽以上が必要です(食材洗浄用と食器洗浄用)。ただし、前回の記事で解説したように、食洗機の導入などで緩和される場合もありますが、まずは2槽を基本に設計しましょう。
- シンクのサイズ:1槽あたりの大きさにも規定があります(例:幅45cm×奥行36cm×深さ18cm以上など)。小さすぎるとNGです。
- 従業員専用手洗い設備:厨房内または隣接した場所に、必ず専用の手洗い器が必要です。石鹸や消毒液、ペーパータオルなども必須です。
- 給湯設備:全てのシンク、手洗い器からお湯が出ること。
② 清潔さの維持:「床」「壁」「天井」の材質と構造
- 床の材質:耐水性があり、清掃しやすい材質(タイル、コンクリート、防水性の高い長尺シートなど)であることが求められます。木材などは原則NGです。
- 床の構造:排水溝があり、水はけが良い構造が理想です。床と壁の境目がカーブしている(R巾木)と、さらに清掃しやすく衛生的です。
- 壁・天井:耐水性で清掃しやすい材質(キッチンパネル、ステンレス、塗装など)。天井はホコリが落ちにくい構造であること。
③ 空気の衛生:「換気」と「防虫・防鼠」
- 換気扇:調理の熱や煙、湿気を十分に排出できる能力のある換気設備が必要です。特に火力の強い調理をする場合は、大型のフードやダクトが必須になります。
- 窓・開口部:窓がある場合は、網戸など、虫やネズミの侵入を防ぐ設備が必要です。排水溝にも防鼠網などを設置しましょう。
④ その他(保管・ゴミ処理など)
- 冷蔵・冷凍設備:温度計付きで、適切な温度管理ができること。
- 食器棚:戸付きで、ホコリなどから食器を守れること。
- ゴミ箱:蓋付きで、十分な容量があること。
- 更衣スペース:従業員が着替えられるスペース(ロッカーなど)も考慮しましょう。
このリストは、あなたの厨房設計図の「赤ペン先生」だと思って、一つ一つチェックしてみてください。
▶ご参考:厚生労働省 – 食品等事業者の衛生管理に関する情報 (※HACCPに基づく衛生管理基準も参照ください)

究極のクリア術! 保健所との「交渉」=事前相談を制する者は、開業を制す
さて、これらの基準を踏まえて設計図を描いたとしても、「本当にこれで大丈夫かな…」という不安は残りますよね。そこで登場するのが、保健所との「交渉術」です。…と言っても、値引き交渉をするわけではありません(笑)。これは「事前相談」という名の、非常に重要なコミュニケーション戦略です。
なぜ「工事前」の相談が必須なのか?
何度も強調しますが、内装工事が始まってからでは遅いのです。壁を立てたり、配管を通したりする前に、「この設計図で飲食店営業許可の条件を満たせますか?」と、プロ(保健所の担当者)の目で確認してもらう。これが、手戻りや想定外の費用を防ぐ、唯一にして最強の方法です。特に、居抜き物件を改装する場合や、難しい形状の物件の場合は、絶対に欠かせません。
相談で伝えるべきこと、聞くべきこと
事前相談では、以下の点を明確に伝え、担当者のアドバイスを仰ぎましょう。
- お店の業態(何をメインに提供するのか)
- 厨房のレイアウト図(シンクや手洗い器、冷蔵庫などの配置がわかるもの)
- 特に不安な点や、基準を満たせるか微妙な点(例:「このスペースに二槽シンクを置くのが厳しいのですが、食洗機で代替できませんか?」など)
担当者は、あなたの計画が法令や条例に適合しているかを確認し、改善点があれば具体的に指摘してくれます。このアドバイスは、まさに「通る」厨房設計への道しるべです。
横浜市など首都圏での注意点
横浜市や川崎市、東京都などの首都圏では、独自の条例や指導基準が設けられている場合があります。例えば、シンクのサイズ規定やグリストラップの設置基準などが、他の地域より厳しいことも。そのため、インターネットの情報だけを鵜呑みにせず、必ず開業する場所を管轄する保健所に直接相談することが重要です。私たちのような行政書士は、こうした地域のローカルルールにも精通していますので、ご不安な場合は頼ってくださいね。
▶ご参考:横浜市 – 食品衛生に関する相談窓口
許可申請から検査までの流れ(おさらい)
保健所の事前相談で設計図にOKが出れば、あとは自信を持って工事を進め、許可申請の手続きに入ります。
- 内装工事・設備設置
- 食品衛生責任者の資格取得/確認
- 申請書類の準備・提出(申請書、図面、資格証明書など)
- 施設検査の日程調整
- 保健所による施設検査
- 許可証の交付・営業開始
この流れの中で、最も重要なのが事前相談で設計図の確認を済ませておくことです。そうすれば、施設検査もスムーズに進み、予定通りにオープンを迎えられる可能性が高まります。
▶ご参考:神奈川県 – かながわの食の安全・安心
まとめ:保健所の基準は「敵」ではなく「羅針盤」
飲食店開業における保健所の設備基準。難しいと感じるかもしれませんが、それは決してあなたの夢を邪魔するためのものではありません。お客様に安全で美味しい料理を提供し、あなたのお店が長く愛されるための、最低限のルールであり、道しるべ(羅針盤)なのです。
- 工事「前」に、保健所の基準をしっかり理解する。
- 基準を満たす「通る」厨房設計を心がける。
- そして、必ず工事「前」に保健所に図面相談する。
この3つのステップを踏めば、保健所の検査も決して怖いものではありません。むしろ、あなたの計画が正しい方向へ進んでいることを確認してくれる、心強い存在になるはずです。
私が店長だった本屋でも、消防法など守るべきルールはたくさんありました。でも、それをクリアするからこそ、お客様が安心して過ごせる「場所」を提供できる。お店作りとは、そういう地道な準備の積み重ねなのだと思います。
あなたの厨房が、最高の料理を生み出す、安全で機能的な舞台となることを願っています!

お店の広さや業態、居抜き物件かスケルトンかによって、厨房設計の条件や注意点は大きく異なります。特に横浜市や川崎市などの首都圏では、独自のルールが存在することも。「うちの設計図、これで本当に大丈夫?」「費用を抑える工夫はない?」など、具体的なご相談やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「お店作り」を全力でサポートさせていただきます。









