
こんにちは!行政書士の栗原です。
「いつか、自分のお店を持ちたい」
その気持ち、痛いほどよく分かります。何を隠そう、私自身も行政書士になる前は「遊べる本屋」の店長として、毎日たくさんのお客様をお迎えしていました。自分のアイデアが詰まった空間で、お客様が楽しんでくれる。お店作りって、本当に最高にクリエイティブで楽しい仕事ですよね。
しかし、その夢を実現するまでの道のりは、まるで壮大な冒険のよう。コンセプト設計に始まり、資金計画、物件探し、そして山のようにある行政手続き…。どこから手をつけていいか分からず、ワクワクした気持ちが不安に変わってしまう方も少なくありません。
そこで今回は、あなたの夢の冒険の書となるべく「飲食店開業の完全ロードマップ」をご用意しました!構想段階からオープン当日までの全手順を、私が店長だった頃の経験も交えながら、時系列に沿って分かりやすく解説していきます。このロードマップを手に、夢への第一歩を一緒に踏み出しましょう!

フェーズ1:夢の設計図を描く「構想・計画」フェーズ(開業約1年前〜)
すべての物語は、最初の1ページから始まります。飲食店開業における最初のページ、それは「どんなお店にしたいか?」という熱い想いを、具体的な「設計図」に落とし込む作業です。
ステップ1:お店の魂!コンセプトを設計しよう
まず最初に決めるべきは、お店の「コンセプト」。これは、あなたのお店の魂であり、すべての判断基準となる北極星のような存在です。
- 誰に(ターゲット):どんなお客様に、どんな時間を過ごしてほしいですか?
- 何を(メニュー):あなたの看板メニューは何ですか?ドリンクは?
- どのように(雰囲気・接客):どんな内装で、どんな音楽を流し、どんな接客をしますか?
私が本屋の店長だった頃、「この棚は、週末に家でゆっくり過ごしたい30代の女性に向けて選書しよう」というように、常にお客様の顔を思い浮かべていました。それと同じです。具体的なお客様像を思い描くことで、お店の輪郭はどんどんハッキリしていきます。この準備が、後の成功を大きく左右するのです。
ステップ2:夢を数字に!事業計画と資金調達
熱い想いだけでは、お店はオープンできません。次に、その夢を具体的な「数字」に落とし込む事業計画の策定と、資金の準備に取り掛かりましょう。これは飲食店開業の計画段階で非常に重要な手続きです。
事業計画書には、開業に必要な初期費用(物件取得費、内外装工事費、厨房設備費など)と、オープン後しばらく赤字でも耐えられるための運転資金(材料費、人件費、家賃など最低3〜6ヶ月分)を詳細に書き出します。
「計画書作りって、なんだか難しそう…」と感じるかもしれませんが、これは金融機関から融資を受ける際の必須書類であると同時に、あなた自身の冒険のコンパスになります。
資金調達の方法は主に以下の通りです。
- 自己資金
- 親族からの借入
- 日本政策金融公庫からの融資
- 地方自治体の制度融資
特に、これから開業する方の多くが利用するのが「日本政策金融公庫」です。まずは一度、ウェブサイトをチェックしてみることをお勧めします。
▶ご参考:日本政策金融公庫 – 新規開業資金
フェーズ2:夢をカタチにする「物件・資格」フェーズ(開業約6ヶ月前〜)
設計図が描けたら、いよいよ夢を現実の形にしていくフェーズです。運命の場所を見つけ、プロとしての証を手に入れましょう。
ステップ3:運命の出会い!物件探しと契約
コンセプトに合った物件を探しに行きましょう!物件には大きく分けて、厨房設備などが残っている「居抜き物件」と、何もない状態の「スケルトン物件」があります。初期費用を抑えたい場合は居抜き物件が魅力的ですが、内装の自由度はスケルトン物件に軍配が上がります。
ここで絶対に忘れてはならない、最重要ポイントがあります。それは、「物件の賃貸契約を結ぶ前に、必ず管轄の保健所に事前相談に行くこと」です。
なぜなら、その物件が飲食店営業許可の施設基準(後述します)を満たせる構造かどうかを、プロの目でチェックしてもらう必要があるからです。「契約したのに、許可が取れない!」なんてことになったら、目も当てられません。この一手間が、後の流れをスムーズにする鍵となります。
ステップ4:プロの証!必要な資格と届出の準備
飲食店を開業するには、いくつかの資格や届出が必要です。特に必須なのが「食品衛生責任者」の資格です。
これは、各店舗に必ず1名置かなければならないと法律で定められています。調理師や栄養士の資格があれば不要ですが、多くの方は各都道府県の食品衛生協会が実施する講習会を受講して資格を取得します。1日で取得できる場合が多いので、早めにスケジュールを確認しておきましょう。
▶ご参考:公益社団法人横浜市食品衛生協会 – 食品衛生責任者養成講習会
その他、お店の形態によって以下の届出も必要になる場合があります。
- 深夜酒類提供飲食店営業開始届出書:深夜0時以降もお酒を提供する場合(警察署へ)
- 防火管理者:お店の収容人数が30人以上の場合(消防署へ)
- 個人事業の開業届:個人事業主として開業する場合(税務署へ)
フェーズ3:いよいよお店作り!「内外装・許可申請」フェーズ(開業約3ヶ月前〜)
いよいよお店作りも本番!理想の空間を作り上げ、行政への正式な申請手続きを進めていきます。ここが行政書士として、一番腕の見せ所となる部分です。
ステップ5:理想の空間作り!内外装工事と設備導入
物件の契約が終わったら、内外装工事に着手します。この時も、保健所が定める施設基準をクリアする設計にすることが絶対条件です。
例えば、以下のような細かい条件があります。
- 厨房の床は、タイルやコンクリートなど耐水性で排水の良い構造か
- 従業員専用の手洗い設備と、お客様用の手洗い設備がそれぞれ設置されているか
- 食器棚には戸がついているか
- シンクは2槽以上あるか(食材用と食器用を分ける)
など、地域によっても条件が異なります。工事が始まる前に、図面を持って再度保健所に相談に行くと、手戻りがなく安心です。
ステップ6:最重要関門!飲食店営業許可の申請
お店の内装が完成する約2週間前になったら、いよいよ飲食店営業許可の申請手続きです。これが受理されなければ、お店を開けることはできません。
申請の大まかな流れは以下の通りです。

この申請は、必要書類が多く、保健所の担当者とのやり取りも発生するため、「難しい」「面倒だ」と感じる方も多いかもしれません。特に、図面作成や書類の不備で手続きが滞ってしまうケースは少なくありません。
申請に必要な書類の一例を表にまとめました。
必要書類(主なもの) | 備考 |
営業許可申請書 | 保健所の窓口やウェブサイトで入手 |
営業施設の大要・配置図 | お店のレイアウト図。厨房設備などを細かく記載 |
食品衛生責任者の資格を証明するもの | 講習会の修了証など |
(法人の場合)登記事項証明書 | 発行から6ヶ月以内のもの |
水質検査成績書 | 貯水槽の水や井戸水を使用する場合 |
申請手数料 | 費用は自治体により異なる(例:横浜市では18,000円) |
これらの準備と並行して、保健所の担当者が実際に店舗に来て、施設が基準通りかチェックする「施設検査」の日程を調整します。
フェーズ4:オープンに向けて最終準備!「実務」フェーズ(開業約1ヶ月前〜)
さあ、冒険もいよいよクライマックス!お客様をお迎えするための最終準備です。
ステップ7:最高のチーム作りと最終準備
一人で切り盛りするお店でなければ、最高のチーム(スタッフ)も必要です。求人媒体やSNSで募集をかけ、お店のコンセプトに共感してくれる仲間を見つけましょう。
同時並行で、以下の準備も進めます。
- 仕入れ先の開拓:食材やドリンクの仕入れルートを確保
- メニューブックの作成:お客様がワクワクするようなメニューブックをデザイン
- 販促活動:SNSアカウントの開設、プレオープンの告知、チラシの作成
- 備品の購入:食器、カトラリー、レジ、ユニフォームなど
この時期は本当にやることが多くて大変ですが、一つ一つ着実にこなしていきましょう。
まとめ:さあ、あなただけのお店の扉を開けよう!
ここまで、飲食店開業の完全ロードマップに沿って、長い旅路を一緒に歩んできました。
構想から始まり、資金計画、物件探し、資格取得、内外装工事、そして最重要関門である飲食店営業許可の申請を経て、ついにオープンへ。本当にたくさんのステップがありますよね。
私が店長だった頃、オープン初日にお店のドアを開ける瞬間は、今でも忘れられません。緊張と期待が入り混じった中、最初のお客様が笑顔で入ってきてくれた時の感動は、何物にも代えがたい宝物です。
このロードマップは、あなたの夢を現実にするための地図です。時には道に迷ったり、難しいと感じる山にぶつかったりすることもあるでしょう。しかし、一つ一つのステップを丁寧にクリアしていけば、必ずあなただけのお店の扉を開ける日がやってきます。
この記事が、あなたの素晴らしい冒険の一助となることを心から願っています。
お店の種類や状況によって、必要な準備や手続きは様々です。具体的なご相談や、「自分の場合はどうなんだろう?」といったご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「お店作り」の夢を全力でサポートさせていただきます。