古民家カフェのDIY、どこまでOK?保健所検査で「待った!」がかかる内装工事

こんにちは!行政書士の栗原です。

太い梁(はり)、漆喰の壁、使い込まれた木の床…。 時を経た古民家だけが持つ、あの独特の温かさと空気感。最高ですよね。

「この雰囲気を活かして、自分たちの手でリノベーションしてカフェを開きたい!」

そんな風に、古民家の持つ唯一無二の魅力に惹かれ、自分だけの空間を作り上げたいと願う方は、きっと多いはずです。

私も「遊べる本屋」の店長時代、古い棚を自分たちで塗装し直して、味わいのある売場を作ったことがあります。自分の手で空間を作り上げるDIYの楽しさ、本当によくわかります。

しかし、こと飲食店開業に関しては、その「DIY精神」と「古民家の味わい」が、保健所の飲食店営業許可の基準と真っ向から衝突してしまうことがあるのです。

「せっかくの梁を見せたかったのに、天井を張らないとダメだと言われた…」 「床を張り替える予算なんてない…」

そんな悲劇を避けるために、内装工事でハンマーを振り上げる前に知っておいてほしい、保健所が絶対に譲らない「厨房のルール」と、残しても大丈夫な「客席のルール」の境界線について解説します。


どこまで直す?保健所の基準は「厨房」と「客席」で全く違う!

まず、一番大切なことをお伝えします。 保健所は、お店の全てをピカピカにしろと言っているわけではありません。

飲食店営業許可の施設基準において、厳格な衛生管理が求められるのは、あくまで「調理を行う場所(厨房)」です。

一方、お客様が食事をする「客席」については、基準が比較的緩やかです。つまり、古民家カフェ成功の鍵は、「厨房」は徹底的に機能的に、「客席」は古民家の趣を残すという、「ゾーニング(区画分け)」の考え方にあります。

このメリハリを間違えると、許可が下りなかったり、逆に無駄な工事をしてしまったりすることになります。

▶ご参考:厚生労働省 – 飲食店営業(一般食堂)の施設基準


DIY派が陥る罠!保健所検査で「待った!」がかかる4つのポイント

では、具体的にどの部分をどう直さなければならないのか。「厨房」と「客席」の違いに注目しながら、DIYでやりがちなNG例と対策を見ていきましょう。

①【床】「木のぬくもり」は客席ならOK、厨房はNG!

  • NG例:雰囲気重視で、厨房の床までフローリング(木材)のままにした。
  • 保健所の基準
    • 厨房耐水性材料(タイル、コンクリート、厚手の長尺シートなど)で作られ、排水が良く、清掃しやすい構造でなければなりません。水や油が染み込む木材はNGです。
    • 客席木材(フローリング)や畳でも基本的にOKです。
  • 対策:厨房エリアだけは、木材の上に防水性のあるクッションフロア長尺シートを隙間なく貼る必要があります。客席との境界線に見切り材を入れるなどして、「ここからが厨房です」と明確に区切ることが重要です。

②【壁】「土壁・砂壁」は厨房には不向き!

  • NG例:古民家特有の土壁や砂壁を、そのまま厨房の壁として使用した。
  • 保健所の基準
    • 厨房:床から1メートル程度の高さ(腰壁)までは、耐水性があり、平滑で清掃しやすいものでなければなりません。水跳ねや油汚れを掃除できない土壁はNGです。
    • 客席:触れてボロボロ落ちてくるような状態でなければ、土壁や漆喰のままでOKな場合が多いです。
  • 対策:厨房部分の壁(特にシンクやコンロ周り)には、ステンレスキッチンパネルを貼るか、耐水性のペンキで塗装して表面をツルツルにする必要があります。

③【天井】「梁(はり)見せ」は素敵だけど…厨房上部は要注意!

  • NG例:開放感を出すために厨房の天井板を抜き、むき出しの梁や屋根裏を見せるデザインにした。
  • 保健所の基準
    • 厨房:天井は「平滑で清掃しやすく、埃(ほこり)が落ちてこない構造」でなければなりません。梁や配線がむき出しだと、そこに溜まった埃が料理や食材に落下するリスクがあるため、NGとされやすいです。
    • 客席吹き抜けや梁見せ天井でもOKです。
  • 対策:ここでもゾーニングが重要です。厨房の上だけは天井板を張り、隙間なく塗装やクロスで仕上げて「埃をシャットアウト」します。その分、客席の天井を高くして古民家のダイナミックさを演出しましょう。

④【手洗い場】「おしゃれな陶器ボウル」の落とし穴

  • NG例:従業員用の手洗い場を、雑貨屋で買った小さな陶器のボウルアンティークな蛇口で作った。
  • 保健所の基準
    • 従業員用(厨房内)「手指の消毒装置(石鹸など)と流水式手洗い設備」であり、サイズも「十分な大きさ(例:幅30cm×奥行30cm以上など自治体による)」が必要です。また、蛇口はレバー式センサー式など、再汚染を防ぐ構造が推奨されます(必須の自治体もあります)。
    • 客用トイレ:ある程度の自由度はありますが、それでも手洗いに適したサイズと構造は求められます。
  • 対策:厨房内の手洗い器は、おしゃれさよりも「機能性」と「サイズ」を最優先しましょう。L-5サイズと呼ばれる規格以上の手洗い器を選び、固定式の石鹸入れを設置することが、許可への近道です。


許可への近道は「図面」を持って「事前相談」へ

ここまで読んで、「どこまでが厨房で、どこからが客席?」「この梁はどうすれば?」と迷われた方もいるかもしれません。 その境界線をはっきりさせ、無駄な工事を防ぐために大切なのが、工事を始める前の保健所への「事前相談」です。

  1. 図面を描く:手書きでも良いので、どこを「厨房」とし、どこを「客席」にするか、床・壁・天井の仕上げをどうするか書き込みます。
  2. 保健所へGO:管轄の保健所横浜市なら各区の福祉保健センター)へ行き、「この古民家でカフェをやりたい。厨房の天井は張るが、客席は梁を見せたい。許可は取れますか?」と相談します。
  3. 修正と着工:担当者から「厨房の上だけボードを貼ればOKです」「シンク周りの壁だけパネルを」といった具体的なアドバイスをもらえます。それに従って計画を修正し、初めて工事に着手します。

この手続き(事前相談)さえしっかり行えば、DIYでも十分に飲食店営業許可を取得することは可能です。費用を抑えるためにも、手戻りのない計画を立てましょう。

▶ご参考:横浜市 – 食品衛生に関する相談窓口


まとめ:古き良きものを、今のルールで守り継ぐ

古民家カフェのDIYは、単なる内装工事ではありません。それは、長い時間を生き抜いてきた建物に、新しい命を吹き込む作業です。

保健所の基準は、確かに厳しく、難しいと感じることもあります。しかし、それはあくまで「安全な食事を提供する厨房」に対するルールです。

  • 厨房は「機能性と衛生、そして埃対策」を最優先に。
  • 客席は「古民家の味わいと開放感」を最大限に残す。

この「使い分け」こそが、古民家DIY成功の鍵です。

私が店長だった本屋でも、古い什器を使いながらも、お客様が怪我をしないよう補強や加工には細心の注意を払っていました。「古さ」と「安全」は、知恵と工夫で両立できるはずです。

あなたの手で蘇った古民家カフェが、地域の人々に愛される素敵な場所になることを応援しています!


古民家の状態や、管轄する保健所(特に横浜市や神奈川県内の各自治体)によって、求められる改修のレベルや「厨房と客席の区切り方」は大きく異なります。「この天井、そのままで大丈夫?」「手洗い場、ここで許可下りる?」など、DIY前の不安や具体的なご相談がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「古民家再生プロジェクト」を全力でサポートさせていただきます。

飲食店営業許可についてはこちらもご覧ください。


Warning

この記事は、2025年9月時点の情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。個別の事案に対する法的アドバイスではありません。飲食店の許可申請にあたっては、必ず最新の法令・条例をご確認の上、必要に応じて管轄の行政機関や専門家にご相談ください。

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