こんにちは!行政書士の栗原です。
好きな場所で、好きなお客様に、自慢の料理を届けられる。そんなキッチンカーの自由なスタイルに、心を奪われている方も多いのではないでしょうか。私も「遊べる本屋」の店長時代、「もしこの本棚ごと、いろんな街へ旅ができたら…」なんて夢想したものです。キッチンカーは、まさにその夢を食の世界で叶える、最高の舞台ですよね。
そして今、その夢を後押しする大きな追い風が吹いています。かつてキッチンカーの最大の壁であった「営業エリアの制限」が、令和3年6月1日の法改正を機に、全国的に大きく緩和されたのです。
今回は、この最新ルールを踏まえ、あなたのキッチンカーが日本中を駆け巡るための具体的な「申請戦略」を、徹底的に解説していきます!

新時代の幕開け!「1つの許可で県内全域OK」が全国の新常識に
まず、これからキッチンカーの開業を考えているあなたに、最高のニュースをお伝えします。
かつては、同じ県内でも市をまたぐと、その都度、管轄の保健所で許可を取り直すのが一般的でした。しかし、法改正による車両基準の全国標準化を受け、多くの都道府県で「県内のいずれか1つの保健所で許可を取得すれば、その都道府県内全域で営業が可能」というルールが新常識となっています。
主要な都道府県の対応状況(2025年8月現在)
例えば、以下のような主要な都道府県では、すでに「県内(都内・府内)一円」での営業が認められています。
- 東京都:都内一円(23区、多摩地域、島しょ部含む)で営業可能。
- 神奈川県:県内一円(横浜市、川崎市などを含む)で営業可能。
- 埼玉県:県内一円(さいたま市、川越市などを含む)で営業可能。
- 千葉県:県内一円(千葉市、船橋市などを含む)で営業可能。
- 愛知県:県内一円(名古屋市などを含む)で営業可能。
- 大阪府:府内一円(大阪市、堺市などを含む)で営業可能。
- 福岡県:県内一円(福岡市、北九州市などを含む)で営業可能。
このように、以前はキッチンカーオーナーを悩ませていた「自治体の壁」が、県内レベルでは劇的に低くなったのです。
▶ご参考:厚生労働省 – 食品衛生法の改正について
STEP1:最強の「エリアパス」を手に入れるための準備
広大なエリアをカバーできる強力なパスを手に入れるため、最初の飲食店営業許可を完璧な形で取得することが、何よりも重要になります。
主役は「全国標準」の車両
令和3年6月1日の法改正で、キッチンカーに求められる設備条件は、全国的に標準化されました。どこで申請するにせよ、以下の基準を満たす車両を準備する必要があります。
- 給排水タンク:十分な容量のタンク(扱う品目によって細かく規定)
- シンク:従事者専用の手洗い設備と、器具洗浄用の2槽以上のシンク
- その他:衛生管理のための各種設備(石鹸、収納、換気扇、ゴミ箱など)
この「全国標準」の車両をしっかり作ることが、後々の県外展開でも圧倒的に有利に働きます。
最初の申請の流れ
申請する保健所は、主にあなたのキッチンカーの車庫の所在地を管轄する保健所となります。基本的な申請の流れは以下の通りです。
- 事前相談:車両を改造・購入する前に、必ず設計図などを持って保健所に相談します。
- 車両の準備と食品衛生責任者の資格取得:相談内容に基づき車両を準備し、並行して食品衛生責任者の資格を取得します。
- 申請書類の提出:申請書、車両の図面、資格証明書などを提出します。
- 車両の持ち込み検査:保健所に車両を持ち込み、職員が直接チェックします。
- 許可証の交付:検査に合格すれば、晴れて広域な営業が可能となる許可証が交付されます。費用は自治体により異なりますが、概ね16,000円〜19,000円程度です。

STEP2:県境を越えろ!「県外遠征」を成功させる戦略
さて、「県内フリーパス」は手に入れました。しかし、あなたの夢はもっと大きいはず。ここからが、キッチンカーの営業許可戦略の本番です。どうやって、あの分厚い「県境の壁」を乗り越えていくのか。そのコツを伝授します。
戦略①:「全国標準仕様」の車両が最強のパスポート
県外で営業したい場合、その営業したいエリア(都道府県)を管轄する保健所に、新規で許可申請が必要という原則は変わりません。
しかし、あなたのキッチンカーは、新しい全国基準に基づいて検査をクリアした「お墨付き」の車両です。そのため、県外の保健所に申請する際、この事実が最強のパスポート(推薦状)になります。
以前のように「うちの県ではこの設備が足りない」と指摘されるケースは激減し、多くの場合、書類審査と車両の現物確認でスムーズに手続きが進みます。これが、法改正後の最大のメリットです。
戦略②:関西で始まった「広域連携」という未来
さらに進んだ動きとして、関西広域連合(大阪府、兵庫県、京都府など)では、府県をまたいで営業許可の乗り入れを認める、画期的な取り組みが始まっています。(2025年6月~ 大阪府と和歌山県で開始) これは、一度の許可で複数の都道府県をカバーできる未来の始まりかもしれません。今後、このような広域連携が全国に広がっていく可能性は大いにあります。
▶ご参考:大阪府 – 【全国初!!】キッチンカーの営業区域が大阪府域に加え和歌山県域に拡大されます!
まとめ:地図を手に、自由な旅へ出かけよう
最新のキッチンカーの営業許可ルール、いかがでしたでしょうか。
法改正により、キッチンカーを取り巻く環境は劇的に改善されました。
- 多くの都道府県では「1つの許可で県内全域」が当たり前に。
- 車両の基準が全国標準化されたことで、「県外遠征」のハードルも大きく下がった。
面倒だった手続きは、今やあなたの自由な旅を保証するための「公式な地図」を手に入れる作業に変わったのです。
私が店長だった本屋も、一冊の本が誰かの人生を変えるかもしれないと信じていました。あなたのキッチンカーの一皿も、旅先で出会う誰かの、忘れられない一日を作る力を持っています。その素晴らしい旅の始まりを、心から応援しています。

キッチンカーの仕様や、営業したいエリアの条例によって、必要な準備や手続きは本当に様々です。ご自身のケースで「この場合はどう進めるのがベスト?」といった具体的なご相談やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「自由な旅」を全力でサポートさせていただきます。