こんにちは!行政書士の栗原です。
酒屋さんの片隅で、P箱(プラスチックの酒ケース)をテーブル代わりに、缶詰をつまみにコップ酒を煽る。あの「角打ち(かくうち)」独特の空気感、たまらないですよね。 私が店長だった「遊べる本屋」でも、本棚の隙間にそんなスペースがあったら最高だな…なんて妄想したものです(本が汚れちゃうので無理ですが!)。
最近は、あえてこの「角打ちスタイル」を取り入れたおしゃれなお店も増えてきました。 「自分も、酒屋をやりながら店先でお客さんに飲んでもらいたい!」 そんな夢を持つ方も多いのではないでしょうか。
でも、ここでふと疑問が湧きませんか? 「あれって、飲食店営業許可を取っているの? それとも酒屋の免許だけでいいの?」
実は、昔ながらの「角打ち」と、現代の「立ち飲み屋」は、法律的には全く別の生き物なのです。今回は、この少しややこしい、でも知っておくと面白い「お酒のルールの境界線」について、分かりやすく解説していきます。

「角打ち」の正体は「味見」?酒類販売業免許のルール
本来の「角打ち」とは、酒屋さん(酒販店)で買ったお酒を、その場で飲む行為を指します。 酒屋さんが持っているのは、税務署が管轄する**「酒類販売業免許(一般酒類小売業免許)」**です。
飲食店許可なしで「飲ませる」ための絶対条件
実は、酒類販売業免許だけでも、店内で飲酒させること自体は禁止されていません。ただし、そこには飲食店営業許可との境界線を越えないための、厳しい条件が存在します。
それは、「飲食店としてのサービス(接客・調理)をしてはいけない」ということです。
OKな行為(酒屋の範囲):
- お酒を瓶や缶のまま販売する。
- 乾きものや缶詰を、開封せずに販売する。
- 場所を提供するだけ(椅子やテーブルを貸す)。
- お客様が自分で栓を開けて飲む。
NGな行為(飲食店許可が必要):
- お店の人が、お酒をグラスに注いで提供する。
- お酒を温める(燗をつける)、水割りを作る。
- 缶詰をお皿に移し替える、温める、ネギを乗せるなどの調理をする。
- 食器を洗って使い回す。
つまり、伝統的な角打ちは、あくまで「買った商品をその場で消費しているだけ(直飲み)」あるいは「購入前の試飲(味見)」という建前で成り立っているのです。自販機の前でジュースを飲むのと、法律的には近い感覚ですね。
▶ご参考:国税庁 – 酒類の販売業免許の申請
現代の角打ちスタイル|「飲食店許可」一本か、販売もできる「二刀流」か
しかし、これから新しくお店を始めるあなたが、「お客様に美味しいおつまみも出したい」「生ビールを注いで出したい」と考えるなら、酒屋の免許だけでは不可能です。
ここで、現代の角打ちスタイルを実現するための選択肢は2つあります。
- 「飲食店営業許可」だけを取る(実質、立ち飲み屋)
- 「酒類販売業免許」と「飲食店営業許可」の両方を取る(ハイブリッド)

あなたのやりたいスタイルはどれ?開業への3つのロードマップ
では、それぞれのパターンについて、メリット・デメリットと必要な手続きを整理しましょう。
パターンA:伝統的な「角打ち」(酒屋のみ)
- 必要なもの:酒類販売業免許(税務署)
- スタイル:買ったお酒をその場で開けて飲む。
- メリット:調理設備がいらないので、初期費用が安い。
- デメリット:料理が出せない。生ビールを注げない。接客サービスが制限される。
パターンB:ネオ角打ち・立ち飲み屋(飲食店のみ)
- 必要なもの:飲食店営業許可(保健所)
- スタイル:お酒をグラスに注いで提供し、料理も出す。
- メリット:メニューの自由度が高い。高単価を狙える。
- デメリット:お酒の「ボトル販売(お土産)」ができない。 ※飲食店営業許可はあくまで「その場で飲食させる」ための許可です。プラカップなどに注いでテイクアウト販売することは可能ですが、瓶や缶のまま(未開栓、あるいは単に栓を抜いただけの状態)で販売することは「酒類の小売」にあたり、酒類販売業免許がないと違法になります。
パターンC:最強の二刀流!「酒屋 + 飲食店」のハイブリッド
- 必要なもの:酒類販売業免許(税務署) + 飲食店営業許可(保健所)
- スタイル:店内で飲食もできるし、気に入ったボトルを買って帰ることもできる。
- メリット:物販と飲食、両方の収益が見込める。お客様の満足度が高い。
- デメリット:手続きが2倍大変。そして、最大の難関である**「場所の区画分け」**が必要。
ハイブリッド(併設)の難関「場所の区画分け」とは?
パターンCを目指す場合、税務署と保健所の両方のルールを守るため、「お酒を売る場所(売り場)」と「飲食する場所(客席)」を明確に分ける必要があります。
- 商品陳列棚と飲食カウンターを混在させない。
- 床の色を変える、パーテーションで区切るなどして、物理的にエリアを分ける。
- 在庫管理(販売用と飲食用)を厳格に分ける。
この「区画分け」が曖昧だと、免許や許可が下りないことがあります。しかし、ここさえクリアできれば、「飲んで気に入ったら、即購入」という最強のビジネスモデルが完成します。
特に横浜市や川崎市、東京都内などの首都圏では、狭小店舗でこの「区画分け」をどう実現するかが、行政書士の腕の見せ所となります。
▶ご参考:横浜市 – 飲食店営業許可について
まとめ:ルールを知れば、お店作りはもっと自由になる
「角打ち」と「立ち飲み屋」、そしてその「ハイブリッド」。 似ているようで、根拠となる法律も、できることも全く違います。
- 酒類販売業免許 = 「売る」ための免許
- 飲食店営業許可 = 「飲食させる」ための許可
- 両方取得 = 「売る」し「飲食させる」(ただし場所は分ける!)
あなたのやりたいことが、「こだわりの日本酒を販売したい」のか、「美味しいおつまみとお酒で場を作りたい」のか、それとも「その両方」なのか。それによって、進むべき道と準備すべき物件の条件が変わります。
私が店長だった本屋でも、法律やルールの壁にぶつかることはありましたが、それをクリアする過程で、逆により面白いアイデアが生まれたりしました。ルールは制約ではなく、あなたの店を安全に運営するためのガイドラインです。
あなたの理想の「一杯」を提供するお店が、街の素敵なオアシスになることを応援しています。

「酒屋もやりたいけど、店先でも飲ませたい」「この物件で区画分けは可能?」など、横浜市を中心に神奈川県内・東京都内・首都圏での開業に関するお悩みは尽きないと思います。そんな時は、ぜひお気軽にご相談ください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「理想の乾杯」を実現するために全力で伴走させていただきます。








