居抜き物件で飲食店開業|契約前にチェックすべき保健所の設備基準リスト

こんにちは!行政書士の栗原です。

「前の店も人気のラーメン屋さんだったから、この居抜き物件ならすぐにでも開業できる!」 そんな夢のような物件に出会えたら、テンションが上がりますよね。厨房設備がそのまま使える居抜き物件は、開業までの時間も初期費用も大幅に節約できる、まさに「宝の山」に見えます。

私も「遊べる本屋」の店長時代、改装費用の捻出には頭を悩ませましたから、その魅力は痛いほど分かります。しかし、ちょっと待ってください。その「前の店も飲食店だったから大丈夫」という思い込み、実は非常に危険なサインかもしれないのです。

なぜなら、飲食店営業許可の基準は、お店の業態(何を扱うか)によって微妙に異なりますし、法律や条例も常にアップデートされているからです。そして何より、保健所は常に「今の基準」であなたの新しいお店を審査します。

今回は、居抜き物件という「宝の山」に隠された「罠」を見抜き、安心して開業準備を進めるための、契約前の保健所設備基準チェックリストを、元店長行政書士として徹底解説します!


「業態変更」が要注意!前の店と違うスタイルの場合

まず、最も注意が必要なのが、前の店とあなたの新しいお店の「業態」が違う場合です。

例えば、「前の店はカフェだったけど、自分はラーメン屋を開きたい」というケース。カフェとラーメン屋では、使う水の量も、油の量も、火力の強さも全く違いますよね。

保健所が見るポイントは「今の業態に合っているか」

保健所は、前の店が何であったかに関わらず、「あなたがこれから始めようとしている業態に対して、この厨房設備は適切か?」という視点で審査します。

  • ラーメン屋の場合:大量のお湯を使うため、給湯能力は十分か?油を多く使うため、グリストラップ(油水分離槽)は設置されているか?その容量は適切か?強力な火力に耐えうる換気扇の能力はあるか?
  • カフェの場合:ケーキも提供するなら、菓子製造業の条件を満たす区画分けは可能か?(これは別記事で詳しく解説しています)

このように、業態が変われば、求められる設備基準(条件)も変わってくるのです。「前の店が許可を取れていた」という事実は、残念ながら何の保証にもなりません。

▶ご参考:食品衛生手続関係 – 横浜市


契約前に絶対確認!保健所設備基準チェックリスト【居抜き物件編】

では、具体的にどこをチェックすれば良いのか。物件の契約書にサインする前に、メジャーとメモ帳(スマホでもOK!)を片手に、以下の項目を必ず確認しましょう。

① 厨房の「心臓部」:シンクと手洗い設備

  • シンクの数とサイズは足りていますか? →原則2槽シンクが必要です。1槽の大きさも自治体の基準(例:幅45cm×奥行36cm×深さ18cm以上)を満たしているか確認しましょう。
  • 従業員専用の手洗い場はありますか? →厨房内または隣接する場所に、手指の洗浄消毒装置付きの専用手洗い設備が必須です。トイレの手洗いとは別に必要です。
  • 給湯設備はありますか? →全てのシンク、手洗い場からお湯が出ることが求められます。

② 排水の「要」:グリストラップの有無と状態

  • グリストラップは設置されていますか? →特にラーメン屋など油を多く使う業態では必須です。横浜市など、条例で設置が義務付けられている場合もあります。
  • 容量は適切ですか?清掃はされていますか? →容量不足や詰まりは、悪臭や害虫の原因、さらには営業停止に繋がる可能性も。蓋を開けて中を確認させてもらいましょう。

③ 空気の「流れ」:換気設備の能力

  • 調理内容に見合った換気能力がありますか? →強力な火力を使う中華料理や、煙が多く出る焼肉・焼き鳥店などは、特に高性能な換気扇やダクトが必要です。能力不足だと、熱気や煙が店内にこもり、保健所の検査で指摘される可能性があります。フードの清掃状況もチェックしましょう。

④ 保管の「基本」:冷蔵・冷凍設備と食器棚

  • 冷蔵・冷凍庫は正常に作動しますか?温度計は付いていますか? →温度管理は衛生管理の基本です。
  • 食器棚には戸が付いていますか? →ホコリなどから食器を守るため、戸棚は必須です。

⑤ 床・壁・天井の「清潔さ」

  • 材質は耐水性で清掃しやすいものですか? →床はタイルやコンクリートなど、壁はステンレスやキッチンパネルなどが望ましいです。ひび割れや剥がれがないかも確認しましょう。

⑥ その他(見落としがちなポイント)

  • 従業員用の更衣スペースは確保できますか?
  • トイレは従業員専用のものがありますか?(客用と兼用の場合、手洗い設備などの基準が異なる場合があります)
  • 食品衛生責任者の資格を持つ人はいますか?(いない場合は講習の準備を)

このチェックリストはあくまで一例です。詳細は必ず管轄の保健所にご確認ください。

▶ご参考:横浜市 – 食品衛生に関する相談窓口


失敗しないための最重要ステップ:契約「前」の保健所相談

このチェックリストを使って物件を内見し、「ここだ!」と思える場所が見つかったとしても、絶対に、すぐに契約してはいけません。

その前にやるべき、最も重要な手続きがあります。それは、お店の図面(簡単な手書きでもOK)を持って、管轄の保健所に事前相談に行くことです。

「この居抜き物件で、こういう業態のお店を開きたいのですが、設備はこのままで飲食店営業許可の条件を満たせますか? もし改修が必要なら、どこを直せば良いですか?」

と、担当者に直接確認するのです。ここでOKをもらえたり、改修箇所が明確になったりすれば、安心して契約に進めます。逆に、ここで「このままでは難しいですね」と言われれば、その物件は諦めるか、想定外の改修費用がかかることを覚悟しなければなりません。この事前相談が、あなたの開業計画を守る最大の防御策なのです。


居抜き物件でのスムーズな飲食店営業許可取得の流れ

保健所の事前相談でGOサインが出れば、あとは通常の申請と同じ流れで進みます。

  1. 物件契約・必要な改修工事:保健所のアドバイスに基づき、必要な箇所を改修します。
  2. 食品衛生責任者の資格取得/確認
  3. 申請書類の準備・提出:申請書、図面、資格証明書などを保健所へ。費用も支払います。
  4. 施設検査:保健所の担当者がお店を訪れ、最終チェック。
  5. 許可証の交付・営業開始

居抜き物件の場合、工事期間が短縮できるため、この流れをよりスピーディーに進められるのがメリットです。

▶ご参考:神奈川県 – 食品衛生(営業許可・届出等)


まとめ:居抜き物件は「近道」か「落とし穴」か

飲食店開業における居抜き物件。それは、準備期間と費用を劇的に削減できる、夢への「近道」のように見えるかもしれません。

しかし、その輝きに目を奪われ、契約前のチェックを怠れば、それはただの「ガラクタの山」、あるいは想定外の出費と手間を生む「落とし穴」になりかねません。

  • 「前の店も飲食店だったから大丈夫」は禁物。
  • 業態が変われば、求められる基準も変わる。
  • 契約「前」に、必ず保健所に図面相談!

この3つの鉄則を守り、冷静な目で物件を見極めること。それができれば、居抜き物件はあなたの夢を加速させる、最高のパートナーになるはずです。

私が店長だった本屋も、たくさんの古本の中に、時を超えて輝く「お宝」が眠っていました。あなたの選んだ居抜き物件も、きっとそんな可能性を秘めていると信じています。



居抜き物件は一つとして同じものはありません。前の店の業態、物件の築年数、そしてあなたが目指すお店の形によって、注意すべき点や必要な手続きは大きく異なります。特に横浜市や川崎市など、首都圏では保健所のローカルルールが存在する場合もあります。「この物件、契約しても大丈夫?」「改修費用はどれくらいかかる?」など、具体的なご相談やご不安な点がございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「賢いお店作り」を全力でサポートさせていただきます。

飲食店営業許可についてはこちらもご覧ください。


Warning

この記事は、2025年9月時点の情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。個別の事案に対する法的アドバイスではありません。飲食店の許可申請にあたっては、必ず最新の法令・条例をご確認の上、必要に応じて管轄の行政機関や専門家にご相談ください。

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    -行政書士登録番号:24091288
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