【バー開業】保健所・警察・消防署…3つの役所を巡る冒険へ。深夜0時を超えて輝くための許認可・届出 全ステップガイド

こんにちは!行政書士の栗原です。

静かな路地裏に佇む、自分だけの特別な空間。カウンターに立ち、シェイカーを振る音だけが響く。そんな「大人の隠れ家」としてのバーを開業する夢、本当に素敵ですよね。私も「遊べる本屋」の店長時代、本棚の間にこっそり隠したお気に入りの一冊のように、誰かのとっておきの場所を作ることに、最高の喜びを感じていました。

さて、その夢を実現するためには、少しばかり冒険に出る必要があります。この冒険の書は、あなたのバー開業という旅の、頼れる相棒となるでしょう。我々が巡る拠点は、「保健所」「警察署」「消防署」の3つ。それぞれの拠点で試練を乗り越え、必要な許認可という名の「宝」を手に入れていきます。

準備はいいですか?深夜0時を超えて、あなたのバーが輝くための冒険へ、いざ出発です。


第1章【保健所】冒険の基本装備を手に入れよ

すべての冒険は、まず基本となる装備を整えることから始まります。バー開業における最初の拠点、それが「保健所」です。ここで手に入れる「飲食店営業許可」は、いわば冒険に不可欠な伝説の剣。これなくして、旅は始まりません。

試練①:飲食店営業許可という名の「剣」を授かる

バーは、お客様にお酒や食事を提供する場所。したがって、どんなお店であっても、まず飲食店営業許可の取得が必須となります。

この許可を得るための最大の試練が、お店の設備が法律の条件を満たしているかという「施設検査」です。例えば、シンクの数や従業員用の手洗い場の設置、食器棚の有無など、細かい基準が定められています。

ここで冒険者(あなた)が絶対にすべきこと。それは、物件の契約前に、お店の図面を持って保健所へ「事前相談」に行くことです。この一手間が、「契約したのに許可が取れない!」という致命的な罠を避けるための、唯一の方法です。この準備こそが、賢者の知恵なのです。

試練②:食品衛生責任者という「相棒」を見つける

冒険には、信頼できる相棒が不可欠です。お店には必ず1名、食品衛生責任者を置かなければなりません。

調理師免許などを持っている方はそのままなれますが、資格がない場合でも、各自治体が実施する講習会を受講すれば、1日で資格を取得できます。あなたの冒険の仲間として、早めに探し出しておきましょう。この手続きの流れを把握しておくことが重要です。

▶ご参考:厚生労働省 – 営業許可制度の概要


第2章【警察署】深夜営業への道を開け

基本装備を手に入れたら、次はいよいよバーの真骨頂、「深夜営業」の道を開くための拠点、「警察署」へと向かいます。ここでのクエストが、あなたのバーを唯一無二の隠れ家へと昇華させます。

試練③:深夜酒類提供飲食店営業の「通行証」を得る

深夜0時を超えてお酒を提供するためには、飲食店営業許可とは別に、警察へ「深夜酒類提供飲食店営業開始届出書」を提出する必要があります。これは「許可」ではなく「届出」ですが、その条件は決して甘くありません。

この届出は、風営法という大人のルールブックに基づいており、いくつかの重要な制約があります。

  • 営業できないエリア(用途地域):第一種・第二種低層住居専用地域など、原則としてバーを開業できない場所があります。
  • お店の構造に関する条件:客室の内部に見通しを妨げる設備がないか、客室の出入口に施錠の設備がないか、店内の明るさが暗すぎないか、など。

申請書類を提出後、警察署の担当者が実際にお店を訪れ、図面通りか、条件を満たしているかを確認する「実査(調査)」が行われます。この調査をクリアして初めて、深夜営業への道が開かれるのです。

罠に注意:「接待」と「サービス」の境界線

ここで、多くの冒険者が迷い込む危険な罠についてお伝えします。それは「接待」の定義です。

もし、あなたのバーで「お客様の隣に座ってお酌をする」「特定の客と継続して談笑する」「一緒にデュエットをする」といった行為を行う場合、それは「深夜酒類提供」の範囲を超え、「接待」と見なされます。そして、「接待」を行うには、非常に取得が難しいとされる「風俗営業許可」が別途必要になります。

この境界線を知らずに越えてしまうと、厳しい罰則が待っています。あなたのバーがどのようなサービスを提供するのか、明確にしておくことが重要です。

▶ご参考:警視庁 – 風俗営業等に関する申請手続


第3章【消防署】お客様と夢の城を守れ

最後の拠点は「消防署」。お客様と、あなたの夢が詰まった大切なお城を、万が一の炎から守るための手続きです。見落としがちですが、安全こそが最高のサービスであることを忘れてはいけません。

試練④:防火の誓いを立てる

お客様と従業員を合わせた収容人数が30人以上になるお店では、「防火管理者」を選任し、消防署へ届け出る義務があります。防火管理者の資格は、講習を受けることで取得できます。

また、お店の工事を始める前や使用を開始する前にも、「防火対象物工事等計画届出書」「防火対象物使用開始届出書」といった書類の提出が必要になります。内装のデザインに夢中になる前に、まずは消防署に「こんなお店を作りたいのですが、消防上の問題はありますか?」と相談に行くのが、賢明な冒険者の選択です。

▶ご参考:東京消防庁 – 防火管理制度とは


冒険の地図(サマリー)

これまでの旅の記録を、一枚の地図にまとめました。あなたの冒険が道に迷わないよう、いつでも見返してください。

冒険の拠点手に入れるべき「宝」タイミング主なクエスト(注意点)
保健所飲食店営業許可 / 食品衛生責任者物件契約前〜店舗完成前最重要:契約前の「事前相談」が運命を分ける!
警察署深夜酒類提供飲食店営業開始届出書営業開始の10日前まで用途地域とお店の構造を要チェック。「接待」の罠に注意!
消防署防火管理者選任届など工事開始前〜営業開始前収容人数30人以上は必須。まずは「事前相談」から。


そして伝説へ…あなたのバーが開業する日

保健所、警察署、消防署。3つの拠点を巡る長い冒険、お疲れ様でした。数々の試練を乗り越え、必要な「宝」をすべて手に入れた今、ついにあなたのバーはオープンを迎えます。

私が店長だった頃、オープン初日にお店のドアを開ける瞬間の、あの静かで澄んだ空気と、胸の高鳴りを今でも覚えています。それは、たくさんの準備と手続きという名の長い冒険を終えた者だけが味わえる、特別なご褒美です。

カウンターを磨き、グラスを並べ、最初のお客様を待つ。その瞬間、これまでの苦労はすべて、最高の物語の序章に変わるはずです。


お店のコンセプトや物件の状況によって、この冒険の書に書かれていない、さらなるクエストが発生することもあります。ご自身のケースで「この先の道はどうなっているんだろう?」と不安な点や、手続きが難しいと感じることがございましたら、どうぞお気軽にお問い合わせください。元店長として、そして行政手続きの専門家として、あなたの「冒険」を全力でサポートさせていただきます。

飲食店営業許可についてはこちらもご覧ください。


Warning

この記事は、2025年6月時点の情報に基づき、一般的な情報提供を目的として作成されたものです。個別の事案に対する法的アドバイスではありません。飲食店の許可申請にあたっては、必ず最新の法令・条例をご確認の上、必要に応じて管轄の行政機関や専門家にご相談ください。

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    くりはら行政書士事務所

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    -行政書士登録番号:24091288
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    ‐著作権相談員

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