皆さん、こんにちは!横浜の行政書士、栗原です。かつては「遊べる本屋」でレアな雑誌のバックナンバーを探したり、面白い雑貨を発掘したりするのが日常でした。今は行政書士として、皆さんのビジネスという名の冒険地図作りをお手伝いしています。ジャンルは違えど、「探求心」が大事なのは同じですね!
さて、最近の民泊に関するご相談で、特によく耳にするのが「あの『180日ルール』って、実際どうなの?」という声。住宅宿泊事業法、いわゆる民泊新法で民泊を始める際に、避けては通れないこのルール。年間180日までしか営業できないなんて…「もっと稼ぎたいのに!」「何かウマい方法、いわゆる『抜け道』はないの?」なんて、思わず考えてしまいますよね。わかります、その気持ち。
確かに、せっかく民泊を開業するなら、最大限活用したいと思うのは当然です。しかし、法律には「抜け道」を探すより、まず「正しい道」を知ることが肝心。まるでゲームの裏技を探す前に、基本操作をマスターするようなものです。
今回の記事では、この「180日ルール」の正確な意味、カウント方法の注意点、そして巷で囁かれる「抜け道」の危険性、さらには法律を守りながら賢く運営するための「ホワイト」な戦略について、元「遊べる本屋」店長で現役行政書士の私が、隅々まで分かりやすく解説します! 民泊の始め方で悩んでいる方、すでに運営中の方も、ぜひご一読ください。
そもそも「180日ルール」って何? 基本のキを再確認
まずは基本からおさらいしましょう。このルールが登場した背景には、インバウンド客の急増と、それに伴う無許可民泊の問題がありました。そこで、ルールを明確化し、健全な民泊市場を育むために2018年に施行されたのが「住宅宿泊事業法(民泊新法)」です。
この法律の核心部分が、「180日ルール」。具体的には、法律の第二条第三項で、住宅宿泊事業とは「(前略)人を宿泊させる日数が一年間で百八十日を超えないものをいう。」と定められています。
ポイントは「人を宿泊させる日数」という点。 予約が入っているだけの日数ではなく、実際にゲストが宿泊した日数でカウントします。
そして、「1日」のカウント方法も重要です。これは、多くのガイドラインで「正午から翌日の正午まで」を1日として計算するとされています。例えば、ゲストが1泊2日で月曜日の15時にチェックインし、火曜日の10時にチェックアウトした場合、これは「1日」としてカウントされます(月曜正午~火曜正午の期間に宿泊行為があるため)。このカウント方法は、意外と誤解されやすいので注意が必要です。
この基本ルールをしっかり押さえることが、合法的な民泊運営の第一歩です。
観光庁が開設したサイトもご参照ください。→【民泊制度ポータルサイト】
なぜ「罠」と言われる? カウントの注意点と自治体の独自ルール
「なんだ、ルールは単純じゃないか」と思ったあなた、もう少しお待ちください。この180日ルールが「罠」と言われることがあるのには、いくつか理由があります。
1:カウント方法の落とし穴:
この「正午~翌正午」を1日とするカウント方法、少しややこしいかもしれませんね。特に連泊の際に誤解しやすいポイントです。単純に「泊数」で数えるのではなく、「実際にゲストが宿泊した【正午~翌日の正午】という期間が何回あったか」でカウントします。
ケース1(1泊2日): 月曜15時にチェックインし、火曜10時にチェックアウト → この場合、ゲストは「月曜日の正午から火曜日の正午まで」の期間内に宿泊しています。この期間は1つなので、「1日」としてカウントします。
ケース2(2泊3日): 月曜15時にチェックインし、水曜10時にチェックアウト → この場合、ゲストは①「月曜日の正午から火曜日の正午まで」の期間と、②「火曜日の正午から水曜日の正午まで」の期間の両方で宿泊しています。宿泊行為のあった「正午~翌正午」の期間が2つあるため、「2日」としてカウントします。 このように、「何泊したか」ではなく、「宿泊行為があった『正午~翌正午』のブロックがいくつあるか」で日数(住宅宿泊事業法上の届出日数)を数える、と考えると少しイメージしやすいかもしれません。カレンダー上で、宿泊期間中に正午を何回またぐか、と考えると分かりやすいでしょう。
予約管理システムによっては日数の表示方法が異なる場合があり、自分で正確に把握・管理する必要があります。エクセルなどで管理簿を作るのが確実です。
住宅宿泊事業の届出をしていない期間の宿泊はもちろん日数にカウントできませんし、違反行為となります。

2:自治体による「独自ルール(上乗せ条例)」の存在:
これが一番の「罠」かもしれません。住宅宿泊事業法は国の法律ですが、各自治体が地域の実情に合わせて、さらに厳しい制限(上乗せ条例)を設けている場合があります。
例えば、「営業できるエリアを限定する」「特定の曜日(例:平日の月~木曜など)は営業禁止」「学童保育施設の周辺では一定期間営業禁止」といった具合です。
これにより、「国のルールではOKなはずなのに、うちの自治体ではほとんど営業できない!」という事態も起こりえます。民泊の始め方として物件を決める前に、必ず!本当に必ず、物件所在地の自治体(保健所や観光課など)に最新の条例を確認してください。「〇〇市 民泊 条例」などで検索し、担当部署に問い合わせるのが確実です。
これらの点を理解せずに運営を始めてしまうと、「気づいたら法律違反(日数超過や営業禁止日での営業)になっていた…」という、まさに「罠」にはまってしまう可能性があります。情報収集と正確な理解が、本当に大切なのです。
噂の「抜け道」を検証! グレーゾーンのリスクとは?
さて、ここからが本題。「180日じゃ足りない!」「もっと稼ぎたい!」という思いから、いわゆる「抜け道」を探してしまう気持ちも分かります。ネット上でも様々な情報が飛び交っていますよね。例えば…
「家族名義や別法人で、同じ物件で別に届出を出せば、実質360日できる?」
「180日を超えそうな分は、ウィークリーマンションやマンスリーマンションとして貸し出せばいい?」
「時間貸しスペースとして貸すのはどう?」
…などなど。一見すると賢い方法のように思えるかもしれませんが、これらの多くは非常にグレー、あるいは完全にアウト(違法)な可能性が高いです。
- 同一物件での複数届出: 住宅宿泊事業法は「住宅」に対して日数をカウントします。届出名義を変えても、同じ住宅であれば通算して180日が上限とされるのが基本的な考え方です。これを回避しようとすることは、法の趣旨に反する「脱法行為」とみなされるリスクが高いです。
- ウィークリー/マンスリー賃貸との併用: 宿泊日数が30日以上にわたる場合は基本的に「賃貸借契約」となり、旅館業法や住宅宿泊事業法の適用外となります。しかし、実態として短期の宿泊を繰り返し行いながら、形式だけ賃貸借契約とするような運用は、「偽装」と判断される可能性があります。特に、家具付きで、清掃サービスなどを提供している場合は、「宿泊」とみなされる可能性が高まります。
- 時間貸しスペース: これは「宿泊」には該当しないかもしれませんが、頻繁に不特定多数の人が出入りすることによる近隣トラブルのリスクや、建物の用途に関する建築基準法の問題など、別の法的課題が生じる可能性があります。
安易な「抜け道」に手を出した結果、行政からの指導、事業停止命令、最悪の場合は罰金や刑事罰を受ける可能性もあります。そうなると、せっかく始めた民泊事業が台無しになるだけでなく、社会的信用も失いかねません。民泊の申請自体も、やり方によっては難しいと感じるかもしれませんが、ルールを捻じ曲げることのリスクはそれ以上に大きいのです。
「難しい」ルールだからこそ、近道を探すのではなく、正しく理解し、向き合うことが重要です。まるで、絶版になったプレミア本を探すとき、怪しい業者から買うのではなく、信頼できる古書店を地道に回るようなものです。
合法的な運用戦略!「ホワイト」な方法で可能性を広げる
「じゃあ、180日ルールの中で黙ってやるしかないの?」…いいえ、そんなことはありません!法律を守りながら、賢く民泊事業を運営するための「ホワイト」な戦略は存在します。
戦略1:旅館業法(簡易宿所)へのステップアップ
これが最も王道かつ確実な方法です。180日を超えて本格的に民泊事業を展開したいのであれば、旅館業法に基づく「簡易宿所」の許可取得を目指しましょう。
メリット: 年間の営業日数制限がありません。収益機会を最大化できます。
デメリット: 住宅宿泊事業法の届出に比べて、設備基準(例:フロント設置義務※緩和措置あり、最低床面積など)が厳しく、消防設備の要件も異なります。そのため、初期投資が大きくなる可能性があり、許可申請の手続きもより複雑で難しい面があります。
ポイント: 最初から簡易宿所を目指すか、まずは住宅宿泊事業法で始めてみて、将来的に切り替えるか、事業計画に合わせて検討しましょう。行政書士は、この旅館業許可申請のサポートも得意分野です。
戦略2:特区民泊(国家戦略特別区域外国人滞在施設経営事業)の活用
もしあなたの物件が国家戦略特区の対象エリアにあるなら、この制度を活用できる可能性があります。
メリット: 自治体によりますが、最低宿泊日数の要件(例:2泊3日以上)を満たせば、180日の日数制限の適用を受けずに運営できる場合があります。インバウンド需要が高いエリアで導入されていることが多いです。
デメリット: 対象エリアが限定的(東京都大田区、大阪府、大阪市、福岡県北九州市など一部)。認定を受けるための要件(施設の構造、滞在者名簿の備え付け、近隣への事前説明など)があります。
ポイント: まずは自分の物件が特区エリア内か、そして自治体がどのような認定基準を設けているかを確認しましょう。観光庁のサイトなどで情報が得られます。(例: 国家戦略特区について – 内閣府地方創生推進事務局 ※リンク先は内閣府ですが、具体的な民泊の運用は各自治体の条例によります)
戦略3:イベント民泊の可能性
これは少し特殊ですが、地域で大規模なイベント(お祭り、スポーツ大会など)が開催され、宿泊施設が不足する場合に、自治体の要請等に基づき、一時的に自宅などを活用する制度です。
メリット: 旅館業法の許可や住宅宿泊事業法の届出がなくても実施できる場合があります。
デメリット: イベント開催時限定であり、実施できる期間や要件は自治体ごとに厳格に定められています。恒常的な事業としては成り立ちません。
ポイント: 地域貢献の一環として検討する価値はありますが、一般的な民泊運営とは異なります。
戦略4:180日ルールの枠内での収益最大化と期間外活用
住宅宿泊事業法の枠内で運営する場合でも、工夫次第で収益性を高めることは可能です。
運営戦略: 宿泊需要が高い週末や連休、観光シーズンに集中して運営し、料金設定を最適化する(ダイナミックプライシング)。
期間外活用: 営業できない期間(180日を超えた期間や、条例で禁止されている期間)は、マンスリー賃貸(30日以上の契約)として貸し出す、自分で利用する(セカンドハウス)、あるいは、建物の用途や管理規約に注意しつつ、撮影スタジオや会議スペースとして時間貸しするなど、別の活用法を検討します。(ただし、時間貸し等を行う場合は消防法や建築基準法など、別途確認すべき法的要件があります)
ポイント: 180日という制限を前提に、年間の収支計画をしっかり立てることが重要です。
戦略5:複数物件での展開(各々でルール遵守)
資金に余裕があれば、異なる物件でそれぞれ届出や許可を取得するという方法もあります。例えば、自宅は住宅宿泊事業法で180日、別に投資用物件で旅館業(簡易宿所)の許可を取る、といった形です。
ポイント: 当然ながら、各物件ごとに法律や条例を遵守する必要があります。安易な日数制限回避策ではありません。
これらの戦略は、いずれも法律の範囲内で行う「ホワイト」な方法です。あなたの状況や目標に合わせて、最適な戦略を検討してみてください。
まとめ:安易な「抜け道」より、正しい知識と戦略を!
民泊の「180日ルール」。一見すると厳しい制限に感じられ、「抜け道」を探したくなる気持ちも理解できます。しかし、見てきたように、安易な方法は大きなリスクを伴います。
大切なのは、ルールを正しく理解し、その上で合法的な戦略を選択すること。まるで、複雑なルールのある面白いボードゲームを、説明書をしっかり読んで攻略法を見つけるように、です。住宅宿泊事業法、旅館業法、特区民泊、そして期間外の活用法…選択肢は一つではありません。
民泊の開業や運営は、確かに難しい側面もあります。しかし、インバウンド需要も回復し、地域に新たな魅力を提供できる素晴らしいビジネスチャンスでもあります。正しい始め方と運用を心がければ、きっと成功への道は開けるはずです。
この記事が、180日ルールとの賢い付き合い方を見つけるヒントになれば幸いです。
【最後に、ほんの少しだけ宣伝】
「うちのケースだと、どの方法がベスト?」「旅館業の申請って、やっぱり難しい?」「条例の解釈がよく分からない…」など、具体的なお悩みや疑問がありましたら、どうぞお気軽に当事務所にご相談ください。元「遊べる本屋」店長ならではの多角的な視点と、行政書士としての専門知識を活かして、あなたの民泊事業が安全かつスムーズに進むよう、最適な戦略探しをサポートします。初回相談は無料ですので、ウェブサイトのお問い合わせフォームからご連絡くださいね。
皆さんのチャレンジを、横浜から応援しています!
こちらもご確認ください。→民泊事業申請について