住宅宿泊事業法だけじゃない!旅館業法との違いは?あなたの物件に最適な民泊営業形態の選び方

(公開日:2025年4月15日)

皆さん、こんにちは! 横浜で行政書士をしております栗原です。かつて「遊べる本屋」で店長をしていたんですが、本棚を眺めて「この本とこの本、ジャンルは違うけど、並べたら面白いかも?」なんて考えるのが好きでした。実は、法律の世界もちょっと似ているところがあって、同じ「民泊」というテーマでも、アプローチの仕方が違う法律があるんです。

最近、インバウンドのお客様も増えてきて、「空いている家や部屋で民泊を開業できないかな?」と考える方が増えていますよね。とても良い視点だと思います! ただ、多くの方が「民泊=住宅宿泊事業法(民泊新法)」というイメージをお持ちではないでしょうか? 書店で平積みになっている話題の新刊、みたいな感じですね。

でも、ちょっと待ってください。書店の奥の棚にも、長く読み継がれている名作があるように、民泊にはもう一つ、「旅館業法」という選択肢もあるんです。今回は、この二つの法律、いわば民泊界の「新刊話題書」と「定番名作」の違いを、それぞれの魅力と注意点を交えながら、行政書士として正確に、そして元本屋店長として少しだけ分かりやすく解説していきます。あなたの物件とやりたいことにピッタリな一冊…じゃなくて、法律を見つけるお手伝いができれば嬉しいです! さらに、見落としがちな消防法や近隣対応のコツ、開業後の運営についても触れていきますよ。

民泊ビジネスの「2つのルート」:住宅宿泊事業法と旅館業法

まず大前提。日本で宿泊料をもらって人を泊めるビジネスをするなら、必ず法律に基づいた許可や届出が必要です(旅館業法 第2条第1項)。これは、どんな本でもちゃんとISBNコード(本の識別番号)があるのと同じような、基本ルールですね。

で、いわゆる「民泊」で主に使われる法律がこの二つ。

  1. 住宅宿泊事業法(民泊新法): 2018年デビューの比較的新しい法律。空き家活用やシェアリングエコノミーの流れを受けて登場しました。「住まい」を一時的に貸し出す、というイメージです。
  2. 旅館業法: こちらは昔からの法律で、ホテルや旅館、そして「簡易宿所」といった「宿泊施設」を運営するための法律。民泊に近いのは「簡易宿所営業」の許可を取るパターンですね。

この二つ、同じ「人を泊める」でも、まるで小説と実用書くらいルールが違います。どちらを選ぶかで、始め方、営業できる日数、手続きの難しい度合い、そしてビジネスの可能性まで、ガラッと変わってくるんです。

ルート1:比較的手軽な「住宅宿泊事業法(民泊新法)」

まずは、多くの方がイメージする「住宅宿泊事業法」から見ていきましょう。新しくて、なんとなく始め方が簡単そう?という印象があるかもしれません。

ここがイイね! メリット

  • 手続きは「届出」: 旅館業法の「許可」に比べると、都道府県知事等への「届出」でOK(住宅宿泊事業法 第3条)。手続きのハードルは相対的に低いと言えます。本で言えば、手続きが簡単なシリーズもの、みたいな感じでしょうか。
  • 「住宅」のままでOK: 建築基準法上の用途が「住宅」のまま始められるのが大きなポイント。これにより、旅館業法では営業が難しい「住居専用地域」でも開業できる可能性があります(※ただし、自治体ルールは要確認!)。
  • 初期コストを抑えやすい: 大掛かりな改修なしで、今ある設備を活かしてスタートできる場合が多いです。

ここは注意! デメリット

  • 最大の壁!「年間180日ルール」: これが一番のポイント。どんなに人気が出ても、年間で営業できるのは最大180日(泊)まで(住宅宿泊事業法 第2条第3項)。「この本、面白いから毎日読みたい!」と思っても、半分しか読めないようなイメージ。本格的な収益を目指すには厳しい制約です。
  • 地域の独自ルール「上乗せ・横出し条例」: 国の法律とは別に、自治体が「うちのエリアでは週末だけね」「夏休み期間はダメよ」といった追加ルールを定めていることがあります。ここ横浜市でも、営業できる曜日や区域に制限がある場合がありますので、必ず事前に確認しましょう。この確認を怠ると、後で「えっ、営業できないじゃん!」となりかねません。
  • 大家さんが住んでる?不在?でルールが変わる: 家主居住型か不在型かで、管理の方法が変わります。特に不在型は、原則として国に登録された「住宅宿泊管理業者」にお願いする必要があり(住宅宿泊事業法 第11条)、その分のコストもかかります。

押さえておきたい規制のポイント

届出、安全確保、衛生管理、外国人対応、名簿作成、標識掲示、苦情対応、定期報告など、事業者に求められる義務があります(住宅宿泊事業法 第5条~第14条あたり)。「届出だから簡単♪」と油断せず、やるべきことはしっかりやる必要があります。

⇒ 住宅宿泊事業法は、こんな人向けかも?
「副業で」「試しに」「使わない期間だけ」など、限定的な活用や、まず一歩踏み出してみたい、という方には良い選択肢です。

ルート2:本格派の「旅館業法(簡易宿所)」

次に、民泊をしっかりビジネスとしてやりたい!という方向けの「旅館業法」に基づく「簡易宿所営業」です。これはまさに、専門書やシリーズ大作に挑むようなイメージかもしれません。

ここがスゴい! メリット

  • 営業日数、制限なし!: なんといってもコレ! 365日フル稼働OK。ビジネスとして収益を最大化したいなら、このメリットは計り知れません。「好きなだけ、この世界に浸ってください」という感じです。
  • 事業としての自由度が高い: 日数制限がない分、価格設定や集客戦略も自由に組み立てられます。

ここが大変! デメリット

  • 許可取得が「難しい」!: 「届出」ではなく「許可」が必要です。保健所の審査があり、これがなかなか手強い。「難しい専門書を読み解く」ような、知識と準備が求められます。
  • 場所を選ぶ(用途地域の壁): 建築基準法で、営業できるエリアが限られます。住居専用地域などは原則NG。まずは自分の物件で許可が取れる場所か、役所に確認するところからスタートです。
  • 建物への要求レベルが高い!: これが最大の難関かも。客室の広さ、トイレ・お風呂・洗面の数、場合によってはフロント(※代替措置あり)など、クリアすべき基準がたくさん。そして、後述する消防法の基準も非常に厳しいです。まるで、豪華な装丁の本を作るような、しっかりした準備が求められます。
  • 「申請」手続きがヘビー級: 提出書類の量も種類も、住宅宿泊事業法とは段違い。図面を用意したり、消防署や保健所と何度も打ち合わせしたり…。「申請だけで一冊の本が書けそう」なくらい、やることが多いんです。

押さえておきたい規制のポイント

都道府県知事等(横浜市の場合は区の福祉保健センター)の許可、構造設備基準のクリア、衛生管理の徹底、宿泊者名簿の管理など、事業者としての責任は重くなります(旅館業法 第3条~第6条あたり)。

⇒ 旅館業法(簡易宿所)は、こんな人向けかも?
「民泊を本業にしたい」「しっかり収益を上げたい」「初期投資や手続きの手間をかける覚悟がある」「”宿泊事業者”としてやっていくぞ!」という、熱意のある方に向いています。

観光庁が開設したサイトもご参照ください。→【民泊制度ポータルサイト】

【重要!】見落とし厳禁!消防法のチェックポイント

さて、どちらの法律を選ぶにしても、絶対に避けて通れないのが消防法です。これはもう、「火事には気をつけようね!」という、超・基本的なルール。でも、民泊の場合は特に注意が必要なんです。

住宅宿泊事業法の場合:

届出をする住宅が、消防法令上の「住宅」として扱われるか、「特定防火対象物(ホテルや共同住宅など、不特定多数の人が利用する建物)」の一部として扱われるかで、求められる消防設備のレベルが変わってきます。

家主居住型か不在型か、建物の規模や構造によっても異なります。

「うちは普通の家だから大丈夫」と油断せず、必ず事前に管轄の消防署に相談・確認しましょう。場合によっては、住宅用火災警報器だけでなく、業務用(!)の自動火災報知設備や誘導灯などが必要になるケースもあります。

旅館業法(簡易宿所)の場合:

こちらは原則として「特定防火対象物」に該当します。つまり、ホテルや旅館と同じレベルの厳しい消防設備基準が求められる、ということです。

具体的には、自動火災報知設備、誘導灯、消火器の設置などが義務付けられます。建物の規模によっては、スプリンクラー設備が必要になることも!

また、一定規模以上の場合は、防火管理者の選任と消防計画の作成・届出も必要になります。

旅館業法の許可を得るためには、消防署の検査を受け、「消防法令適合通知書」を交付してもらうことが必須条件です。これがなければ、保健所の許可は絶対に下りません。

消防法への適合は、ゲストと自身の命を守るための最低限の義務です。そして、適合のための工事費用は、時に数百万円単位になることも…。物件選びや事業計画の段階で、消防法のコストをしっかり見積もっておくことが、後で「こんなはずじゃなかった!」とならないための鉄則です。正直、ここは専門家(消防設備士さんや、消防に詳しい行政書士)に早めに相談するのが一番の近道ですよ!

消防庁作成の民泊を始めるにあたってのリーフレットもこちらからご参照ください。

【円満運営の秘訣】ご近所さんとの良い関係づくり

民泊運営でよく聞くトラブル、それは残念ながら「ご近所さんとの関係悪化」です。騒音、ゴミ出し、見知らぬ人の出入り… ちょっとしたボタンの掛け違いが、大きな問題に発展することも。地域に迷惑をかけず、気持ちよく運営するためには、日頃からの配慮が欠かせません。これはもう、本屋が地域に愛されるために、お店の前をきれいにしたり、挨拶したりするのと同じですね。

住宅宿泊事業法でも義務: 法律にも「周辺地域の生活環境への悪影響の防止」(法第10条)として、騒音防止の説明や苦情対応などが義務付けられています。

旅館業法でも当然重要: ホテルや旅館だって、地域との共存は不可欠ですよね。

具体的なアクション例:

事前説明(任意ですが効果大): 可能であれば、開業前に近隣の方へご挨拶と簡単な説明をしておくと、印象が全く違います。「どんな人が運営しているか分からない」という不安を取り除くことが大切です。

ハウスルールの徹底: 「夜間の騒音禁止」「ゴミの分別・指定日以外のゴミ出し禁止」「敷地内禁煙(または指定場所のみ)」など、具体的なルールを定め、宿泊者にしっかり周知しましょう。多言語表記は必須です!

緊急連絡先の明示: 何かあった時に、すぐに連絡が取れる体制を整え、その連絡先を近隣の方にも伝えておくと安心感につながります。

清潔感の維持: 建物周りの清掃やゴミ置場の管理を徹底し、常に清潔な状態を保つことも大切です。

「お互い様」の気持ちを忘れず、地域の一員として配慮ある運営を心がけることが、トラブルを未然に防ぎ、長く愛される民泊への道です。

【開業はスタートライン!】運営を軌道に乗せるヒント

許可取得や届出完了!さあ、これで一安心…ではありません! それは長い物語の序章が終わっただけ。ここからが、あなたの民泊運営という本番のストーリーが始まります。いくつか運営のヒントを。

集客戦略

OTA(Online Travel Agent): Airbnb、Booking.comなどのプラットフォームは集客の柱。魅力的な写真と、分かりやすく正直な紹介文が鍵です。

SNS活用: Instagramなどで施設の魅力や地域の情報を発信し、ファンを作りましょう。

独自HP: 長期的に見れば、独自予約を受け付けるHPも有効です。

価格設定

競合調査: 周辺の類似施設の価格をリサーチ。

変動価格: シーズン、曜日、地域のイベント等に合わせて価格を柔軟に設定(ダイナミックプライシング)。安売りしすぎず、適正な価格を見つけることが重要です。

ゲスト対応

迅速・丁寧なコミュニケーション: 予約前の問い合わせからチェックアウト後まで、丁寧な対応を心がけましょう。良いレビューは最高の宣伝です。

多言語対応: 翻訳ツールなども活用し、外国語ゲストにも対応できる体制を。

おもてなし: ちょっとしたウェルカムメッセージや、地域のおすすめ情報提供など、プラスアルファの気遣いがリピーターに繋がります。

清掃とリネン交換

清潔感は命!: ゲストが最も気にするポイントの一つ。常に徹底した清掃を。

外注か自営か: コストと品質のバランスを見て判断。外注する場合は信頼できる業者選びが重要です。

備品管理とメンテナンス

消耗品チェック: トイレットペーパー、シャンプー、タオルなど、切らさないように。

設備点検: エアコン、給湯器、Wi-Fiなど、定期的に動作確認を。故障は大きなクレームにつながります。

会計・税務

収支管理: 売上、経費をしっかり記録しましょう。

確定申告: 民泊収入は事業所得または雑所得として申告が必要です。不安な場合は税理士さんに相談を。

法令遵守(忘れずに!)

住宅宿泊事業法: 年間の営業日数報告(定期報告)は義務です。

旅館業法: 宿泊者名簿の適切な管理・保存。許可条件によっては更新手続きが必要な場合も。

運営は、地道な作業の積み重ね。でも、ゲストからの「ありがとう!」の一言や、素敵なレビューが、何よりの励みになりますよ。

さあ、どっちのルートを選ぶ? あなたの「物語」に合うのは?

二つの法律ルートと、運営上の注意点を見てきましたが、「で、結局、私はどっち?」となりますよね。
これはもう、どんな本を読みたいか?と同じで、「あなたの状況」と「あなたの目的」次第なんです。

ざっくり比較(再掲)!

比較ポイント住宅宿泊事業法(民泊新法)旅館業法(簡易宿所)どっちが重要?
営業日数年間180日以内制限なし収益性重視なら旅館業法
手続き届出(比較的楽)許可(難しい)手軽さ重視なら住宅宿泊事業法
営業エリア住宅地もOK(※1)用途地域制限あり物件の場所で選択肢が絞られる
建物要件緩やか厳しい初期投資・改修費に影響大
消防設備要確認・比較的緩やか(※2)事業用必須・厳しいコストと安全性の最重要ポイント
初期投資抑えやすい高くなりやすい予算計画のキモ
事業の性格副業・お試し向け本格事業向けあなたの本気度次第!

※1 自治体条例は要確認! ※2 物件・運営形態による。消防署への確認必須。

シンプルに言うと…

  • 気軽に始めたい、副業で、という方は「住宅宿泊事業法」(ただし、消防・近隣対応はしっかり!)
  • 本気で稼ぎたい、事業として育てたい、という方は「旅館業法」(ただし、初期投資と手続きの覚悟が必要!)

ただし、これはあくまで一般論。あなたの物件の状況(特に場所、建物の状態、消防設備)によっては、やりたくてもできない、ということもあります。まずは、自分の持っている「本の原稿(=物件)」が、どちらの「出版ルート(=法律)」に乗せられるのか、冷静に分析することが大切です。

迷ったら「編集者(専門家)」に相談しよう!

「うーん、やっぱり自分のケースだと判断が難しいなぁ…」「消防法、思ったより大変そう…」「この申請って、具体的にどうやるの?」「そもそも開業できるのかな?」
そんな風に悩んだら、ぜひ専門家を頼ってください。本作りで迷ったら編集者に相談するように、許認可申請で迷ったら、私たち行政書士の出番です。

専門家に相談するメリットは、

  • 時間の節約: 面倒な書類集めや役所とのやり取りを任せて、あなたはもっと大事なこと(物件の魅力アップとか!)に集中できます。
  • 確実性アップ: 最新の法律や地域のルールに合わせて、スムーズに手続きを進めます。「うっかりミスで開業が遅れた!」なんて事態を防ぎます。
  • 安心感: 「これでいいのかな?」という不安から解放されます。特に消防法や建築基準法が絡む複雑な案件では、その価値は大きいです。

もちろん費用はかかりますが、それは良い本を作るための投資のようなもの。スムーズなスタートダッシュは、その後の事業運営にもきっとプラスになりますよ。

まとめ:あなただけの「民泊ストーリー」を始めよう!

今回は、民泊を始めるための二つの法律、「住宅宿泊事業法」と「旅館業法」について、さらに消防法、近隣対応、運営のヒントも交えて、少し詳しくお話ししました。

  • 民泊には「住宅宿泊事業法」と「旅館業法」の2ルートある。
  • それぞれメリット・デメリットがあり、どちらが良いかは状況次第。
  • 消防法と近隣対応は、どちらのルートでも超重要ポイント!
  • 営業日数、手続きの難しい度、費用、そしてあなたの「やりたいこと」で選ぼう。
  • 開業後の運営も視野に入れて計画を。
  • 迷ったら、専門家(行政書士)に相談するのも賢い手。

インバウンド需要も追い風となり、民泊はますます面白くなる可能性を秘めた分野です。あなただけの素敵な「民泊ストーリー」を紡いでいくために、まずは正しい知識という名の「インク」と、適切な手続きという名の「ペン」を手に取るところから始めてみませんか?

もし、「私の場合はどうなの?」「具体的な申請の始め方は?」など、具体的なご相談があれば、いつでもお気軽に声をかけてください。ここ横浜で、あなたの「やってみたい!」という気持ちを、しっかりとした形にするお手伝いができれば、元本屋店長としても、行政書士としても、最高に嬉しいです!

こちらもご確認ください。→民泊事業申請について


※本記事の内容は2025年4月現在の法律に基づいています。法律や条例は変更される可能性がありますので、最新情報は必ず関係機関にご確認ください。

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