こんにちは、元「遊べる本屋」の店長、現在は行政書士として活動している栗原です。
「民泊を始めたいけれど、どんな許可や届出が必要なのかよく分からない……」
「高まるインバウンド需要をキャッチして、新たな収入源を確保したい!」
そんな声をよく聞きます。確かに、民泊の「始め方」はひとことで語れないほど奥深く、適用される法律や手続きがケースによって異なります。
この記事では、2025年最新の情報をもとに、民泊を「旅館業法型」「民泊新法型」「特区民泊型」の3つの方式に分けて、それぞれの必要な許可・届出、注意点、向いているケースなどを分かりやすく解説していきます。
商売を始めたい方、民泊でインバウンド需要を取り込みたい方、申請が難しいと感じている方にとって、「これがあれば安心!」というチェックリスト付きでお届けします。
【まずは知っておきたい、民泊3方式の全体像】
民泊とひとことで言っても、実は以下の3つの法制度が存在します:
- 旅館業法に基づく「簡易宿所営業」
- 住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)
- 特区民泊(国家戦略特区における条例民泊)
それぞれ許認可の種類や手続きの難易度、営業可能な期間や地域の制限などが異なります。
区分 | 根拠法 | 形態 | 営業日数 | 主な対象 | 特徴 |
---|---|---|---|---|---|
旅館業法民泊 | 旅館業法 | 許可制 | 制限なし(365日) | 本格的に宿泊業を営みたい方 | 設備基準が厳しいが自由度が高い |
民泊新法民泊 | 住宅宿泊事業法 | 届出制 | 年間180日以内 | 副業やシェアリングとして民泊を始めたい方 | 比較的簡易な手続きだが営業日数に制限あり |
特区民泊 | 国家戦略特別区域法 | 認定制 | 制限なし(365日) | 特区内で特定の条件下で営業したい方 | 特定の地域限定だが柔軟な運営が可能 |
観光庁が開設したサイトもご参照ください。→【民泊制度ポータルサイト】
【パターン①:旅館業法(簡易宿所)】
旅館業法は、本来はホテルや旅館を対象にした法律ですが、「簡易宿所営業」として民泊運営も可能です。宿泊施設としての機能が求められる分、ハードルはやや高めです。
▼必要な許可・届出:
- 旅館業法に基づく「簡易宿所営業許可」
- 消防法に基づく事前協議・防火設備の整備
- 建築基準法上の用途地域・構造確認
- 保健所との協議
▼特徴比較表(旅館業法型)
項目 | 内容 |
---|---|
営業日数 | 制限なし(通年営業可能) |
申請先 | 都道府県(または保健所設置市) |
主な設備要件 | フロント設置、居室区分、非常口など |
向いている人 | 本格的に宿泊業を始めたい方、専用物件で安定運営したい方 |
【パターン②:住宅宿泊事業法(民泊新法)】
民泊新法は、2018年に新しく制定された住宅を活用した民泊制度です。副業や空き家活用など、柔軟なスタイルに対応しています。
▼必要な許可・届出:
- 住宅宿泊事業届出(電子申請可能)
- 消防計画の提出(管轄消防署と要相談)
- 近隣住民への事前説明と記録
- 清掃体制や緊急連絡体制などの整備
▼特徴比較表(民泊新法型)
項目 | 内容 |
---|---|
営業日数 | 年間180日まで |
申請先 | 都道府県等への届出(観光庁所管) |
主な設備要件 | フロント不要、住宅としての居住性重視 |
向いている人 | 副業、空き家活用、簡易な開業を目指す方 |
【パターン③:特区民泊】
国家戦略特区に指定された地域(例:東京都大田区、大阪市など)でのみ可能な方式です。条例に基づき、柔軟な運営ができる一方で、地域ごとにルールが異なる点には注意が必要です。
▼必要な許可・届出:
- 特区民泊申請(対象自治体への申請)
- 消防署・建築指導課との事前調整
- 定められた営業日数(例:2泊3日以上など)
▼特徴比較表(特区民泊型)
項目 | 内容 |
---|---|
営業日数 | 制限なし(条例による条件あり) |
申請先 | 自治体(例:大阪市、大田区など) |
主な設備要件 | 旅館業法より緩やか(例:フロント不要) |
向いている人 | 特区エリアに物件がある、長期運営志向の方 |
よくある質問と回答
Q1: 民泊開業にかかる費用はどれくらい?
A: 費用は選択する方式によって大きく異なります。
費用項目 | 旅館業法民泊 | 民泊新法民泊 | 特区民泊 |
---|---|---|---|
申請費用 | 2〜5万円程度 | 1〜3万円程度 | 2〜5万円程度 |
設備投資 | 100万円〜 | 10〜50万円程度 | 50〜100万円程度 |
消防設備 | 10〜50万円程度 | 5〜20万円程度 | 5〜30万円程度 |
専門家費用 | 10〜30万円程度 | 5〜15万円程度 | 10〜20万円程度 |
※これはあくまで目安であり、物件の状況や地域によって大きく異なります。
Q2: 民泊の申請から開業までどれくらいの期間がかかりますか?
A: 一般的な目安は以下の通りです:
- 旅館業法:申請から許可まで1〜3か月程度
- 民泊新法:届出から開業まで2週間〜1か月程度
- 特区民泊:申請から認定まで1〜2か月程度
ただし、書類の不備や追加調査が必要になった場合は、さらに時間がかかることがあります。
Q3: 外国人向けの対応は何が必要ですか?
A: インバウンド対応として、以下の準備をしておくと良いでしょう:
- 多言語対応の案内表示(英語・中国語・韓国語等)
- 無料Wi-Fi設備
- 翻訳アプリや多言語対応の説明書
- 緊急時の外国語対応マニュアル
- キャッシュレス決済対応
- 外国人観光客向け情報(近隣の観光地、交通機関等)
Q4: 民泊新法で家主不在型と家主居住型の違いは?
A: 主な違いは以下の通りです:
項目 | 家主居住型 | 家主不在型 |
---|---|---|
住宅宿泊管理業者への委託 | 不要 | 必要 |
管理責任 | オーナー自身 | 住宅宿泊管理業者 |
コスト | 低い | 管理委託費用が発生 |
手間 | チェックイン対応等の負担あり | 管理を委託できる |
向いている人 | 自宅の空き部屋を活用したい人 | 投資用物件で民泊をしたい人 |
Q5: 無許可で民泊を運営するとどうなりますか?
A: 無許可・無届での民泊営業は法律違反となり、以下のような罰則が科される可能性があります:
- 旅館業法違反:6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金
- 住宅宿泊事業法違反:6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金
- 特区民泊違反:6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金
また、税務申告漏れによる追徴課税や、トラブル発生時の損害賠償責任も問われる可能性があります。適法に運営することが重要です。
【民泊開業に必要なチェックリスト】
✅ 用途地域は宿泊施設の運営が可能か?(都市計画法)
✅ 建物の構造は法令に適合しているか?(建築基準法)
✅ 消防法に基づいた設備(通報装置・避難経路など)は整っているか?
✅ 届出や許可に必要な書類は揃っているか?
✅ 清掃・ゴミ処理・緊急対応などの体制が整っているか?
✅ 近隣住民への配慮はされているか?
※制度により、求められる条件は異なります。必ず各法令・自治体のガイドラインを確認しましょう。
【まとめ:3制度の最終比較一覧】
項目 | 旅館業法民泊 | 民泊新法民泊 | 特区民泊 |
---|---|---|---|
手続きの種類 | 許可制 | 届出制 | 認定制 |
営業日数制限 | なし(365日可能) | 年間180日以内 | なし(365日可能) |
対象地域 | 全国(用途地域による制限あり) | 全国(条例による制限あり) | 特区指定区域のみ |
対象客 | 制限なし | 制限なし | 主に外国人旅行者(2泊3日以上) |
設備基準 | 厳しい | 比較的緩やか | 中程度 |
住居専用地域での営業 | 原則不可 | 可能(条例による) | 可能(区域による) |
手続きの難易度 | ★★★★☆ | ★★☆☆☆ | ★★★☆☆ |
初期コスト | 高い | 低い | 中程度 |
運営の自由度 | 高い | 中程度 | 中程度 |
【最後に】
民泊は「インバウンド需要」や「空き家対策」など、時代のニーズにマッチしたビジネスモデルです。しかし、その始め方は決して一つではなく、制度ごとの違いをしっかり理解しないと、開業準備の段階でつまずいてしまうこともあります。
「制度の選び方が難しい……」「申請ってどこまで自分でできるの?」そんなときは、信頼できる行政書士に相談するのもひとつの方法です。専門家の知識をうまく活用して、スムーズな開業を目指しましょう!
こちらもご確認ください。→民泊事業申請について
※本記事の内容は2025年4月現在の法律に基づいています。法律や条例は変更される可能性がありますので、最新情報は必ず関係機関にご確認ください。