【民泊開業完全ガイド】旅館業法 vs 民泊新法(住宅宿泊事業法)どっちを選ぶ?

こんにちは!行政書士の栗原です。以前は「遊べる本屋」の店長をしていた経験から、難解な法律の世界も「遊べる」くらい分かりやすくお伝えしたいと思っています。

今回は、民泊ビジネスを始めようと考えている方に向けて、適用される法律の違いとそれぞれのメリット・デメリットについて解説します。インバウンド需要の回復とともに再び注目される民泊ビジネスですが、「始め方が分からない」「法律が難しい」というお声をよく耳にします。

この記事を読めば、あなたに最適な民泊の形態が見えてくるはずです。さあ、一緒に民泊の法律の迷宮を探検しましょう!

目次

  1. 民泊とは?
  2. 民泊に関する3つの法律
  3. 旅館業法による民泊
  4. 民泊新法(住宅宿泊事業法)による民泊
  5. 特区民泊
  6. どの法律を選ぶべき?ケース別アドバイス
  7. 開業までの流れ
  8. よくある質問

民泊とは?

民泊とは、一般の住宅を活用して旅行者に宿泊サービスを提供するビジネスモデルです。自宅の空き部屋や空き家を有効活用できる点が魅力で、Airbnbなどのプラットフォームの普及により世界中で人気を集めています。

日本では2018年に「住宅宿泊事業法(通称:民泊新法)」が施行され、民泊の法的位置づけが明確になりました。しかし、民泊を開業する方法は実はこの民泊新法だけではありません。

観光庁が開設したサイトもご参照ください。→【民泊制度ポータルサイト】


民泊に関する3つの法律

民泊を始める際に適用される法律は主に以下の3つです:

  1. 旅館業法:従来からあるホテル・旅館などの宿泊施設に適用される法律
  2. 住宅宿泊事業法(民泊新法):2018年6月に施行された民泊に特化した法律
  3. 国家戦略特別区域法(特区民泊):特定の地域で規制緩和された民泊制度

それぞれの法律によって、申請手続きや運営条件が大きく異なります。どの法律を選ぶかによって、ビジネスモデルも変わってくるので、しっかり理解しておきましょう。


旅館業法による民泊

概要

旅館業法は、ホテルや旅館などの宿泊施設に適用される法律です。この法律のもとで民泊を運営する場合、「簡易宿所」として営業許可を取得します。

メリット

  • 営業日数の制限なし:365日営業可能
  • 外国人観光客受け入れの制限なし:インバウンド需要を最大限に取り込める
  • 料金設定の自由度が高い:繁忙期と閑散期で柔軟に価格設定可能

デメリット

  • 設備基準が厳しい:フロント設置や消防設備など、設備投資が必要
  • 用途地域の制限:住居専用地域では原則として営業不可
  • 申請手続きが複雑:保健所や消防署など複数の機関への申請が必要

こんな人におすすめ

  • 本格的に宿泊業として長期的に運営したい人
  • 投資をしてでも規模を拡大したい人
  • 住居専用地域以外の物件を所有している人

民泊新法(住宅宿泊事業法)による民泊

概要

2018年6月に施行された「住宅宿泊事業法」は、一般住宅を活用した民泊に特化した法律です。「住宅宿泊事業者」として届出を行うことで、比較的簡易な手続きで民泊営業が可能になります。

メリット

  • 届出制で比較的簡単:許可制ではなく届出制のため、開業のハードルが低い
  • 住居専用地域でも営業可能:一般住宅を活用できる
  • 設備基準が緩和:旅館業法に比べて設備投資が少なくて済む

デメリット

  • 年間営業日数の制限:180日(年間)までしか営業できない
  • 地域による上乗せ規制:自治体によっては独自の規制があるケースも
  • 管理業務の義務:住宅宿泊管理業者への委託が必要なケースがある

こんな人におすすめ

  • 副業として民泊を始めたい人
  • 自宅の空き部屋を活用したい人
  • 初期投資を抑えて参入したい人
  • 住居専用地域の物件で営業したい人

特区民泊

概要

国家戦略特別区域法に基づく「特区民泊」は、特定の地域(東京都大田区、大阪市など)で適用される民泊制度です。外国人旅行者向けに、最低宿泊日数の緩和などの特例があります。

メリット

  • 年間営業日数の制限なし:365日営業可能
  • 比較的簡易な手続き:旅館業法よりは手続きが簡素
  • 住居専用地域でも営業可能:一般住宅を活用できる

デメリット

  • 対象地域が限定的:指定された特区内の物件に限られる
  • 最低宿泊日数制限:原則として2泊3日以上の宿泊が条件(地域により異なる)
  • 外国人旅行者向け:主に外国人観光客を対象としている

こんな人におすすめ

  • 特区内に物件を所有している人
  • インバウンド需要に特化したビジネスを展開したい人
  • 長期滞在者をターゲットにしたい人

どの法律を選ぶべき?ケース別アドバイス

ケース1:本格的に宿泊業として取り組みたい

👉 旅館業法をおすすめします。 初期投資は大きくなりますが、営業日数の制限がなく、長期的に安定した収益を見込めます。

ケース2:自宅の空き部屋を活用したい

👉 民泊新法が最適です。 届出だけで始められ、設備投資も最小限で済みます。ただし、年間180日の営業制限があることを念頭に入れておきましょう。

ケース3:インバウンド需要を狙いたい

👉 状況によって異なります。

  • 特区内の物件で、長期滞在者をターゲットにするなら→特区民泊
  • 365日営業して最大限の収益を上げたいなら→旅館業法
  • 副業として取り組むなら→民泊新法

開業までの流れ

旅館業法の場合

  1. 物件の選定(用途地域の確認)
  2. 設備基準の確認と改修工事
  3. 消防署への相談(消防設備の確認)
  4. 保健所への申請
  5. 現地調査・審査
  6. 営業許可取得
  7. 開業

民泊新法の場合

  1. 物件の選定
  2. 自治体の条例確認
  3. 消防法令適合通知書の取得
  4. 住宅宿泊事業届出書の提出
  5. 届出番号の取得
  6. 標識の掲示
  7. 開業

特区民泊の場合

  1. 物件の選定(特区内であることの確認)
  2. 自治体の条例確認
  3. 設備基準の確認と改修工事
  4. 特区民泊の認定申請
  5. 認定証の取得
  6. 標識の掲示
  7. 開業

どの方法を選んでも、申請手続きは決して簡単ではありません。書類の不備があると審査が遅れる原因になりますので、専門家への相談をおすすめします。


よくある質問

Q1: 民泊は本当に儲かるの?

A: インバウンド需要の回復とともに収益性は向上していますが、物件の立地や設備、運営方法によって大きく異なります。また、法律に基づいた適切な運営が必要です。

Q2: 民泊新法で開業する場合、管理業者への委託は必須?

A: 住宅の区分所有者が自ら居住している場合や、住宅宿泊管理業務の管理受託契約を締結し、不在時に住宅宿泊管理業者に管理業務を委託する場合は、住宅宿泊管理業者である必要はありません。ただし、家主不在型の場合は住宅宿泊管理業者への委託が必要です。

Q3: 旅館業法による簡易宿所の申請は難しい?

A: 設備基準や書類準備など確かに難しい面はありますが、専門家のサポートを受ければ円滑に進めることができます。ただし、住居専用地域では原則として開業できないなど、立地による制限があることに注意が必要です。

Q4: 無許可で民泊を運営するとどうなりますか?

A: 無許可営業は法律違反となり、罰則の対象になります。旅館業法違反の場合、6ヶ月以下の懲役または100万円以下の罰金、民泊新法違反の場合も罰則があります。必ず適切な申請・届出を行いましょう。


まとめ

民泊開業には3つの法的選択肢があり、それぞれにメリット・デメリットがあります。自分の目的や物件条件に合わせて最適な方法を選びましょう。

開業の申請手続きは確かに難しく感じることもありますが、一つ一つステップを踏んでいけば実現可能です。特に初めての方は、専門家のアドバイスを受けることで、スムーズに開業準備を進めることができます。

インバウンド需要の回復に伴い、民泊ビジネスの可能性は再び広がっています。この記事が、あなたの民泊開業の第一歩になれば幸いです。

何か質問があれば、お気軽にご相談ください。あなたの民泊開業を全力でサポートします!

こちらもご確認ください。→民泊事業申請について


※本記事の内容は2025年4月現在の法律に基づいています。法律や条例は変更される可能性がありますので、最新情報は必ず関係機関にご確認ください。

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