よし、古物商としての一歩を踏み出すぞ! お店のコンセプトも決めた。扱う品目も考えた。営業所の目処も立った。
…でも、ちょっと待ってください。 その前に、一つだけ、絶対にクリアしなければならない最終面接があります。それは、「“あなた自身”が、古物商の許可をもらえる人物かどうか」という、法律からの問いかけです。
こんにちは!元「遊べる本屋」店長の行政書士、栗原です。僕が店長だった頃、新しい仲間を採用するために、たくさんの履歴書を見て、面接をしてきました。どんなにやる気があって、面白いアイデアを持っていても、お店のルールや信頼を守れない人は、残念ながら採用できませんでした。
実は、古物商の許可申請も少し似ています。法律で定められた「こういう人は許可できませんよ」という基準、それが「欠格事由(けっかくじゆう)」です。
今回は、この古物商許可の「欠格事由」について、誰にでもわかる「10の質問」形式で、セルフチェックができるように完全解説します!申請して時間とお金を無駄にしてしまう前に、この記事で申請前に必ず確認しておきましょう。これは、あなたのビジネスの未来にとって、どんな履歴書よりも大事なチェックかもしれません。

なぜ「欠格事由」のチェックが“履歴書より大事”なのか?
まず、なぜこのセルフチェックがそんなに重要なのでしょうか。理由は大きく2つあります。
- 時間とお金の致命的な無駄を防ぐため もし欠格事由に該当しているのに気づかず申請してしまうと、警察署に支払った手数料(19,000円)は一切返ってきません。それどころか、書類集めに奔走したあなたの貴重な時間も、すべて水の泡になってしまいます。
- ビジネスの「信頼性」の根幹だから 古物営業許可制度の目的は、盗品の流通を防ぐことです。そのため、法律は「事業を誠実に営める、信頼できる人物」にしか許可を与えない、という厳しい姿勢をとっています。この基準をクリアしていることは、プロの古物商としての大前提なのです。
【完全版】古物商許可の「欠格事由」セルフチェック!10の質問
それでは、深呼吸をして、一つひとつの質問に「YES」か「NO」で正直に答えてみてください。古物営業法第4条の内容を、分かりやすく翻訳しました。
Q1. 現在、破産手続中で、まだ「復権」を得ていない状態ですか?
解説: 自己破産の手続きが進行中、または完了しても「免責許可決定」が確定していない場合は「NO」と答えられません。「復権」していれば問題ありません。
Q2. 過去5年以内に、犯罪を犯して「禁錮刑」や「懲役刑」になりましたか?
解説: 刑務所に入るような刑罰を受けた場合です。たとえ執行猶予が付いていても、その猶予期間が満了してから5年が経過していない場合は、残念ながら該当してしまいます。
Q3. 過去5年以内に、「古物営業法違反」や「窃盗」などで「罰金刑」になりましたか?
解説: ここが注意点です。罰金刑でも、違反の内容によっては欠格事由になります。特に、無許可営業や名義貸しなどの古物営業法違反、または窃盗、背任、遺失物横領、盗品等有償譲受けなどの財産犯が対象です。
Q4. 現在、暴力団員ですか?または、暴力団員でなくなってから5年以内ですか?
解説: 暴力団排除条項です。ご自身だけでなく、従業員などにも同様の基準が求められます。
Q5. 住居の定まらない、いわゆる住所不定の状態ですか?
解説: 古物商は警察署の監督下に置かれるため、連絡先となる一定の住所が必要です。
Q6. 過去に古物商の許可を取り消され、その日から5年以内ですか?
解説: 一度、不正な行為などで許可を取り消されると、5年間は再取得できません。厳しいペナルティです。
Q7. 心身の故障により、古物営業を適正に営むことが難しい状態ですか?
解説: 例えば、成年被後見人や被保佐人に該当する場合などです。ご自身の判断能力について不安がある場合は、専門家への相談が必要です。
▶ご参考:法務省 成年後見制度~成年後見登記制度~
Q8. あなたは未成年者(18歳未満)ですか?
解説: 原則として未成年者は許可を受けられません。ただし、例外的に、法定代理人(親権者など)から営業の許可を受けている場合や、婚姻している場合は認められる可能性があります。
Q9.【法人の場合】あなたの会社の役員(取締役や監査役)の中に、上記Q1~Q7に当てはまる人はいませんか?
解説: 法人で申請する場合、このチェックは役員全員について必要になります。たった一人でも該当者がいると、会社として許可は下りません。
Q10. 営業所ごとに、適切な「管理者」をちゃんと選任していますか?
解説: これは厳密には申請者本人の欠格事由ではありませんが、許可の必須条件です。そして、その選任した管理者が、上記Q1~Q8に当てはまらないことも絶対条件です。 このように、古物商許可の「欠格事由」は、あなた自身だけでなく、法人役員や管理者にも関わる重要なチェック項目なのです。
「もし、一つでもYESがあったら…」正直に専門家へ相談を
このセルフチェックで、もし「YES」に当てはまる項目があった、あるいは判断に迷う項目があったとしても、決して悲観しないでください。そして、絶対にやってはいけないのが「嘘の申請」です。
なぜなら、警察署は必ず詳細な調査を行いますし、もし虚偽の申請が発覚すれば、許可が取れないだけでなく、罰則の対象になる可能性すらあるからです。
大切なのは、まず現状を正確に把握し、正直に専門家に相談することです。 例えば、「執行猶予期間は満了したけど、5年経っているか微妙…」「かなり昔の交通違反の罰金がこれに当たるか不安…」など、自分では判断が難しいケースは数多くあります。
私たち行政書士は、あなたの秘密を守り、法律に基づいて「許可取得の可能性があるのか」「今は待つべきなのか」「何か他に打つ手はあるのか」を一緒に考えるパートナーです。
まとめ – 最終チェックを終えて、自信を持って申請へ!
古物商許可の「欠格事由」のセルフチェックは、あなたの夢への挑戦が、時間とお金の無駄という悲しい結果に終わらないための、非常に重要な申請前の最終確認です。
この「10の質問」をすべてクリアできたなら、おめでとうございます!あなたは古物商になるための資格を十分に持っています。ぜひ自信を持って、警察署のドアを叩いてください。
▶ご参考:警視庁 古物商許可申請
▶ご参考:e-Gov法令検索 – 古物営業法
もし、このセルフチェックで判断に迷う項目があったり、「自分のこのケースは大丈夫?」と具体的な不安を感じたりした場合は、申請前に必ずご相談ください。あなたの状況を丁寧にお伺いし、最適なアドバイスをさせていただきます。あなたの新しい挑戦を、心から応援しています。